山形県と新潟県の県境の大朝日岳あたりを北限として、中部地方から四国・九州地方にかけて分布する日本固有種のユリで、関東地方では見られない。ユリの中では開花時期が5月~7月と早く咲き、葉の形がササの葉に似ているとしてササユリの名がついたようだ。
草丈1mほどの細い茎の上に、淡いピンク色の花弁長15㎝の大輪の花をつける。花姿は清楚で上品であり、実に優美な花である。筆者は、国産野生種で最上の美花として挙げることに躊躇いはない。
だが、種子から芽生えて花が咲くまで7年ほどかかり、ウィルス病にかかりやすく、嫌地現象で連作を嫌うという繊細な性質があり、ユリの中で最も栽培が難しい植物と言われている。陽の当たり具合、土壌水分、風通しなど、栽培に気を付けるべき条件が非常に多い。
故に、暑い市街地の観察園で咲いているササユリは、筆者の細やかな毎年の世話があっての結果であり、密かに自画自賛している。
こんなに綺麗なユリなのに、葉がササの葉に似ているとしてササユリという素っ気ない名前がついているのが、筆者は不満である。別名として「サユリ」という名があるが、その言われは牧野博士によれば、咲く時期が早いので早百合、5月に咲くので皐月百合がサユリになったのだろうと牧野植物図鑑で淡々と記述している。
筆者はもっと美しい名前をつけてあげたいのだ。が、ヒメユリは、スカシユリ属の別種のユリに使われ、オトメユリは別名ヒメサユリ(姫早百合)の標準和名に使われている。では・・・優雅百合、艶麗百合、淡麗百合、美女百合、小町百合などはどうだろうか・・? それはアンタの勝手、今更ショウモナイ事を言い張って、ボケたのとチャウ?、美しい花はまだ沢山あるわヨ!と、誰もいないのに、何処か遠くからそんな声が聞こえてきた・・・。ボケたのかなぁ。