8月の植物 タイタンビカス

花は20~25㎝の大輪で、草丈2~3mに成長する。一つの花は一日花であるが、株立ちした大株になると次々と開花するので、大きな花が多数咲いて、美しさと存在感に圧倒される。ハイビスカスの花を大きくしたような花姿で、繁殖・成長力の圧倒的な強さから、「巨神タイタン」に因んで「タイタンビカス」と名付けられたようだ。アメリカフヨウとモミジアオイの交配選抜種で、三重県津市の赤塚植物園が作出し、2009年から全国販売された全く新しい園芸品種であり、絶大な人気を誇っている。
だが、小生は名前が気に入らない。巨大で強靭だからタイタンは良いとして、ビカスとはなんだ?意味不明の言葉で、これではどんな植物かも想像がつかない。ハイビスカスのハイを省略し、更にビスカスのスを省略してビカス・・・・か。日本人がすきな省略語だ。和名もなく、どこの国の言葉でどんな意味かもわからないタイタンビカス、これがこの秀逸で見事な花の正式名称である。可哀そうだ。

7月の植物 ボタンクサギ

中国南部~インド北部原産の落葉低木で、樹高1~2m、地下茎から芽を出して広い範囲に茂る。梅雨時から夏にかけて、ピンク色の小花が直径15cmほどのボール状にまとまって咲く。綺麗な花だ。花には、ほんのりよい香りもする。開花する花が少ないこの時期には、クロアゲハ、カラスアゲハ、ナガサキアゲハなどが好んで吸蜜に飛来する。しかし、葉に触れると独特の臭気がムワーッと辺りに漂う。クサギ(臭木)の葉の臭いだ。クサギも本種も同じシソ科クサギ属なのだ。花はボタンのように綺麗だが、葉はクサギ(臭木)と同じ臭いなので、ボタンクサギの名になった。名を聞いただけで臭い木と推測でき、近寄るのが躊躇される。変な名前を付けられて悲しむべきか。
だが、気の毒な名前はもっとある。ママコノシリヌグイ、オオイヌノフグリ、ハキダメギク、ヘクソカズラ、ジゴクノカマノフタ・・・・。クサギの名前をつけた見返りに、バランスをとって綺麗な花の代表たるボタン(牡丹)の名も併せ付けたのだから、我慢してなァ~と、見るたびに声掛けしている。

7月の植物 フユザンショウ

冬になって、わずかながらも緑のままの葉を落とさないところからの名前。サンショウやイヌザンショウに比べ、葉は楕円形でなく披針形になり、ヌルデのように葉軸に翼がある。雌雄別株だが、日本では雌株しか存在せず、ヤマコウバシと同様に雌株だけで実をつけ単為生殖する。刺は大きく長いので、オニザンショウの別名がある。漢名は秦椒・竹葉椒。石灰岩や石灰分の多い地質を好むためか、火山灰地の東京近辺ではあまり見られない。中国では、食用として花椒(華北山椒)だけでなく、ほかの山椒も食べたり、薬用にしていた。麻婆豆腐には日本のサンショウでは辛みが足りず、ウナギの蒲焼には香り高い日本のサンショウの方が良い。中国ではカラスザンショウの新芽も食用にしていが、油を使った料理では、アクや辛みがマイルドになるからだろう。

7月の植物 オニユリ

日本、朝鮮半島、中国の平地~低山で見られる花であるが、日本では人里近くに限られる種である。ヒガンバナやシャガと同様に三倍体のため、種子はできず、葉の脇にできるムカゴ(珠芽)で繁殖する。朝鮮半島に二倍体があり、対馬には二倍体が多く自生し三倍体と混生する。このことから、古い時代に食用として朝鮮から渡来したと考えられている。珠芽の形成に栄養を取られ、親の球根があまり大きくならないので、現代では食用のユリネは、同じ仲間だが珠芽をつくらないコオニユリが栽培・供給されている。花色が濃橙色で花弁が後ろ向きに反り返っている姿なので、怒った赤鬼を思わせることからついた名前と思われるが、可哀そうだ。とは言え、日本では、濃紅色~淡紅色の花弁をもつ草花は非常に多いが、濃橙色や赤色の花は極めて少ないため、違和感を覚え毒々しく感じる。草丈2mにもなるオニユリが、多数の花をつけ、しかも毒々しい濃橙色の花弁の先端をそり返させた花姿に出会うと、正直言って、筆者も少なからずギョッとする。

7月の植物 ノリウツギ

樹高2m~5mになる落葉灌木で、枝が細く長く伸びて先端の重さで倒れ、つる植物のように見えることもある。樹皮から粘液をとり、和紙を漉くときのコウゾなどの繊維の分散・浮上材(ネリ)として使用したことからの名前で(ネバリ⇒ネリ⇒ノリ)、別名ノリノキ、北海道でサビタという。現在ではノリウツギに代わり、より粘度の高いトロロアオイの根から抽出した粘液や化学糊を使うことが多くなったが、粘度の高いガンピ(雁皮)から和紙をつくる場合は、より低い粘度のノリウツギを使うことが多いようだ。全国手すき和紙連合会の調査では、漉き手がネリとして使用するものとして、トロロアオイは約60%、化学ネリは13%、ノリウツギは10%弱とのことである。アジサイと同様に、花房には萼が変化した装飾花が混在し、花が枯れてからも茶色くなって翌年以降まで残る。ある村の美しい乙女が、若者からプロポーズされたが、それをお断りするのに、乙女は「この花が散る時がきたらお返事します」と答えたそうだ。若者は燃ゆる思いで返事を待ち焦がれたが、いつまでも返事がもらえなかったという話がある。

7月の植物 チダケサシ

夏に高さ1mほどの長い花茎を出して、ほぼ白色~薄紅色の花を咲かせる。夏から秋にかけて山で採取したチチタケ(チタケとも言う)を、持ち帰るのに、本種の長くて堅い花茎にチチタケをさして持ち帰ったことからの名前。チチタケは独特のよい出汁が出るため、特に栃木県ではマツタケよりも高価に取引され、炒めたナスとチチタケをつゆに用いる「ちたけ蕎麦」は代表的な郷土料理となっている。さて、チチタケの傘の部分はもろいのだが、チダケサシの花茎をどのようにチチタケにさして持ち運んだのだろうか。柄の部分にイワシの目刺しのように並べて花茎をさしたのだろうか、それとも、傘の上から柄の根元部分へ挿し通して、傘が触れ合って欠損しないよう固定して運んだのだろうか。目刺しのように刺したなら「乳茸刺」だが、傘から柄へ通して運んだとなると「乳茸挿」ではないだろうか・・・書物では一様に「乳茸刺」となっているが・・・・。ヒマ老人の考えることはくだらない・・・・か。

7月の植物 アカバナウバユリ

山林の林内に自生するウバユリの赤花品種。だいぶ以前、長崎県とその後熊本県の極めて限られた場所での自生が発見され、発見者によって自家栽培された子孫が市場に出回ったものと思われる。ウバユリの園芸品種となるのか、変種なのか、別種となるのか、分類も生態も不明な部分が多い植物(正式学名はまだついていない)。一度花を咲かせると、元の球根は消滅し、小さい球根が複数残る。種子から花が咲くまで成長するには5~6年はかかる。市場に出回っているのは、黒みがかった濃紅色であるが、自生する現地では鮮紅色のものもあるようだ。ということで、観察園ではこの濃紅色の花後の種子を蒔いて、その中から鮮紅色のものが出現しないかなぁと、5~6年先の夢を追いかけ育てている。

7月の植物 ツリガネニンジン

花が釣鐘形で、根が朝鮮人参に似ていることからの名前。草原や草刈りなどの管理された河川堤防など、日当たりの良い草地に自生。玉川上水の護岸には、上水が草原に開削された時の遺存植物として、現在でも多く自生している。花時は本種であることが分るが、花がない時期は、葉の形や大きさ、葉序が株によって大きく異なるものがあり、混乱させられる。変種も多く、中国・九州地方ではサイヨウシャジン、中部地方以北の高山植物ハクサンシャジン、四国蛇紋岩地域のオトメシャジンなどがある。根を煎じたものは健胃、鎮咳に効能ありとされ、山菜として「山でうまいはオケラにトトキ、里でうまいはウリ、ナスビ、嫁に食わすは惜しうござる」と長野県の俚謡で歌われている。だが、それほど美味いものではない。山村の食の貧しさを期せずして表している。

7月の植物 ハクチョウソウ

白い花弁が4枚、そのうち上の2枚は斜め上に開き、下の2枚は左右水平に開く。触角のように長い雄しべが下向きにでて、丁度、白い蝶が下向きに止まっているように見えるところからの名前。それゆえ白鳥草ではなく、白蝶草である。しかし、桃色の園芸品種は、ヤマモモソウと呼ばれている。山桃(ヤマモモ科)とは似て似つかぬ花であり、名づけの親のセンスが疑われる。そのせいか、園芸店では旧学名の属名からとったガウラ(Gaura lindheimeri)の名が使われるようになった。しかし、しかし、最近、Gaura 属(ヤマモモソウ属)はマツヨイグサ属(Oenothera)に統合されたので Oenothera lindheimeriとなるが、その場合はガウラではなく、エノテラの名前を使うのだろうか。そんな人間界の戸惑いをよそに、今日もハクチョウソウは優雅に咲いている。

7月の植物 ゴーヤー

ウリ科のある野菜の沖縄方言が、今ではゴーヤーという一般流通名となっている。一昔前はニガウリの名で売られ、60年以上前は、標準和名のツルレイシの名で売られていた。インド・ボルネオなど熱帯アジア原産で、15~16世紀に中国に伝わり、日本へは16世紀頃に伝来。ゴーヤーの名が一般化したのは1990年代から始まった沖縄料理ブームでのゴーヤーチャンプルー、2001年に放送された沖縄県小浜島と沖縄本島を舞台にしたNHK連続テレビ小説『ちゅらさん』で登場したキャラクター人形「ゴーヤーマン」の影響によるものと思われる。温暖化が注目されだした近年は、成長が早くウリハムシによる食害が比較的少ないことから、グリーンカーテンの材料としてよく植栽されている。雄花と雌花があり、雌花に結実する。
油を使って高温で調理することで、苦味を適度に抑える料理に使われている。苦み成分はククルビタシンというフラボノイド系の成分によるもので、摂取し過ぎると下痢、胃腸障害等が生じる可能性があるので要注意。