2月 ジョウビタキのメス

 中国東北部やロシアの極東部沿海地方から、毎年冬に日本にやってくる渡り鳥。スズメよりも少し小さい大きさで、冬は身近な鳥なのだが、気づかないことが多い。しかし、竹箒で落ち葉を掃き寄せていると、どこからか必ずと言ってよいほど現れる。枯葉の下に隠れていたクモ、ゴミムシ、ネキリムシなどガの幼虫を採餌するためだ。山の中では、猪や鹿の歩く後をつけ回しているのだろうか。

 否、人間の枯葉を掃除する音を聞きつけて、むき出しになった昆虫などを見つけるほうが、ずっと効率がよいと判断してのことだろう。賢い鳥である。だが、人間を恐れず、ミルワームなどで餌づけると、手のひらの餌を食べるようにもなるようだ。縄張り意識が強く、車のサイドミラーに写った自分の姿をめがけて、飛び掛かる姿もよく見られる。それゆえバカヒタキとも言われている。

 雄の頭部は白銀色で、胸~腹はオレンジ色、翼は黒色であるが、雌は全体に灰色がかった褐色で、翼は濃褐色であり、雌雄で羽の色が異なる。雌雄の共通点は、翼に白い紋があることであり、そのためモンツキドリとか、モンツキサンという愛称もある。

 それにしては、なんとも難しい名前だ。ジョウ(尉)とは、翁と同様に高齢の男性を意味する言葉で、雄の頭部が銀白色であることから、人間の白髪を連想したものである。そしてヒタキとは、火焚きであり、鳴き声がキッキッキッともカッカッカッとも聞こえる火打石を叩くような音から名付けられたようだ。高齢となった筆者には、こうした高周波の声はあまりよく聞き取れない。故に枯葉掃きをしていて、近寄って来た白い紋つきで、来たなぁと見分けている。

 観察園を開園して4~5年間は、雄が毎年やってきて縄張りとしていた。が、ここ10年あまりは、世相を反映してか、毎年雌が縄張りにしている。晩秋に繁殖地の中国東北部やロシアの極東部沿海地方から日本に渡ってきて、3月には繁殖地に戻る。体重わずか13g~20gの小さい体で、よくぞ海を越えて往復できるなぁと感心する。春一番など春の嵐の風に、枯葉のように風に乗って海を渡るのだろうか。思わず、紋付さん、頑張れ!と声をかけたくなる。

2月 メジロ

ヤツデの実を食べているメジロ(上)とすでに巣立ちを終えたメジロの巣(下)