自然観察園ご利用に際してのお知らせ

新型コロナウイルス感染防止対策のため開園時間が変更となっています。

開園時間
 火から金曜日:13時から16時まで
 土・日・祝日:10時から16時まで

入園に際してのお願い
・過去2週間以内に感染が引き続き拡大している国・地域への訪問歴がある場合は入園をご遠慮ください。
・体調不良の方は入園をご遠慮ください。
・マスクを必ず着用してください。
・人と人との距離(ソーシャルディスタンス)を十分に確保してください。
・消毒による貴重な生物への影響を考慮し、トイレは当面の間使用できません。
・管理棟内をご利用頂く際には検温をお願いしています。

9月 ナンバンギセル(南蛮煙管)

南蛮煙管とは、いわゆるマドロスパイプのことで、オランダの船員(matroos)が口にくわえていたパイプを指す。刻みタバコを吸うときに葉を詰めて火をつける煙管の火皿の部分が、日本の煙管よりも大きかった。また、火皿と吸い口をつなぐ軸(羅宇)の部分が短くて、咥えて口にぶら下げることのできるように大きく湾曲していた。日本の軸(羅宇)は長く、竹でできていて、煙管は手で支え持つことが必要だ。ナンバンギセルは、その花と花茎の形がマドロスパイプの形に似ているところからの名前である。淡紫色の花と花茎が10~20㎝前後地上に出て、地下にごく短い茎と鱗片葉が数枚あるだけの寄生植物で、野山のススキの根に寄生し、7月~9月、根元で開花している。暑い時期であるが、穂がでていないススキの、長い葉を押し上げて根元をよく探すというマニアックな作業をすると、運が良ければ、こっそり咲いている姿を見つけることができる。 観察園では、ミョウガの子(花穂)を採ろうとして根元にナンバンギセルが発生しているのをみつけた。驚いて調べてみると、多くのイネ科やカヤツリグサ科などの単子葉植物、例えば、ススキ、サトウキビほか、ミョウガ、ギボウシ、そしてユッカなど木本にまで寄生している事実が判明。その訳を考えると、単子葉植物特有の繊維状の根が、寄生しやすいからと考えられる。となると、これからトウモロコシ、小麦などにも寄生する可能性もあり、寄生されると収穫量が減ることになる・・・・大変だ。

9月 キバナコスモス(黄花コスモス)

日本には、夏から秋に開花する花が少ないため、昔はコスモス(オオハルシャギク、秋桜、Cosmos bipinnatus)や、ジャノメソウ(ハルシャギク、Coreopsis tinctoria)が良く植えられた。ジャノメ ソウは、花の色は中心が濃紅色で、周辺が黄色の蛇の目模様をしており、夏空の下では暑苦しくさえ感じる花だった。道路際や線路際など、どこでも野生化して群がり咲いていた。しかし、近年ではその姿を見ることが極めて少なくなった。とって代わるように市街地では、現在オレンジ色で八重咲きのキバナコスモス(Cosmos sulphureus)が大きな顔をしている。以前は一重咲きの黄色い花で、花弁も小さめだったので、センダングサの改良種?程度の認識だった。だが、現在では、オレンジ色の八重咲で、花も一回り大きい改良品種となり、市内各所で植えられ、いやでも目につくようになった。繁殖力も強く、場所によっては自然 繁殖・野生化している。センダングサやシロノセンダングサが生えると、ヒトは引き抜いて捨て去るが、キバナコスモスは咲くがまま、繁殖するがままにして引き抜こうとはしない。美人はトクだなァの感がある。

9月 カラスウリ(烏瓜、唐朱瓜) ウリ科

雌雄異株のつる性多年草で、鶏卵形で朱色の果実が木の枝にぶら下がる秋の姿で、人々に親しまれている。一方、花は、7~9月の夏の夜に開き、朝には萎む一日花である。夜にひっそりと白く繊細で美しい花を咲かせるが、誰にも知られずに明け方には花を終わらせてしまう様子から、「男嫌い」の花言葉がある。雌雄異株なので雄花と雌花は別の株に咲くが、開花している時間が一夜だけなので、受粉する機会も少なく、いかにも薄幸薄命な色白美人を思わせる。雄花雌花とも花筒は6㎝と長く、花冠には小さな花弁が4~6枚あり、花弁の縁は糸のように細かくレース状に分裂して10㎝ほどに広がる。月明りの闇で白く目立つ投網を投げかけた感じである。雄花は芳香を出し長い花筒の底には蜜がある。吸蜜しようと花弁に止まろうとしても、細い糸状の花弁なので、吸蜜者の重さに耐えかねて花弁は垂れてしまい、吸蜜作業が妨げられる。ハチドリのように、空中をホバリングして吸蜜できるスズメガの独壇場だ。スズメガが雄花で吸蜜中に口吻についた花粉は、雌花の底に口吻を伸ばした時に雌しべに付着し、受粉が成立する。やがて明け方とともに、細いレース状の花弁は、受粉した雌しべを包むように縮み花は閉じる。開花時刻、暗闇で目立つ白色の花、芳香、レース状の花弁、長い花筒・・など、全てはスズメガの飛来に焦点をしぼった仕掛けで、カラスウリの花粉の受粉確率を大幅に高めている。決して「男嫌い」ではなく、私の彼氏はスズメガですと、一途な花なのだ。

ヒメジャノメ(姫蛇目) タテハチョウ科

木漏れ日が射しこむような薄暗い疎林の草むらなどでよく見られるチョウで、幼虫はススキ、アズマネザサ、チヂミザサ、カサスゲ、エノコログサ(ネコジャラシ)などイネ科・カヤツリグサ科の植物を食べて育つ。日本では北海道渡島半島から九州屋久島などで見られる普通種である。翅の色は地味な淡褐色で、裏面にはやや黄色みをおびた白い縦帯模様と目玉模様(蛇目模様)がある。成虫は花には殆ど飛来せず、樹液や腐った果実、犬などの獣糞にあつまる。曇天の日を除くと、昼間はあまり活動せず薄暗い所で休んでいて、夕方になって薄暗くなると飛び回る。いわば日陰者の生活である。この仲間は翅の裏面にヘビの目に似た目玉模様があるのが特徴で、野鳥などの敵を驚かせ相手が一瞬ひんだ隙に飛び去る作戦であろう。ジャノメチョウの仲間は日本に24種も生息しており、いずれも〇〇ジャノメ、△△ヒカゲ、コノマ(木の間)の名がつけられている。目立つチョウではないが、筆者はこの仲間との出会いを鮮明に覚えている。北アルプス白馬岳山頂の山小屋付近でウルップソウの葉陰から飛び出したタカネヒカゲ、海道網走湖畔のトドマツ林の草むらから飛び出たオオヒカゲ、山梨県清里高原のカラコギカエデの樹液から湧き出たウラジャノメなど、当方が彼女らの存在に気づかず近づいての、突然の驚きのためだ。ヒメジャノメは、人々は気づいていないかもしれないが、市街地の公園、あるいは住宅地でも繁殖している「普通種」で、多数生息している。蛇目模様はヘビがいない市街地での、野鳥対策にはならないはずだが、トカゲ、カエル、カマキリに対して、蛇の目模様は、効果的なのだろうか。

9月 オジギソウ(お辞儀草、含羞草、ミモザ) マメ科

オジギソウの学名はMimosa pudica で、ミモザはオジギソウの仲間の名前なのだが、現在ではアカシア類の花をミモザと呼ぶことが一般化した。19世紀に南フランスで、オーストラリアからアカシア類を輸入して植栽したところ、よく繁殖した。2月の寒い時期に丸くボール状の可愛い黄色の花が沢山咲くところから人気の花となった。オジギソウ(ミモザ)もボール状の丸い花(ただしピンク色)で葉も似ているところから、フサアカシアのことをミモザアカシアと呼んでいたが、やがて省略されてミモザとなった。南仏リヴィエラ一帯の有名なミモザ祭は、アカシアの黄色く丸い花を冬の太陽と見立て、春の訪れを祝っての盛大な祭となった。かくして、ミモザの名は世間から忘れ去られ、しっかりしろよと小突かれて、すみませんと日本ではオジギソウ、中国では恥じて含羞草、米国では感じやすい植物 Sensitive Plant なので、触らないで Touch-me-not と名付けられた。しかし、オジギソウは食植動物からの食害を避けるために、刺激を受けると我が身をことさら小さくみせようと体を縮めているようだ。刺激により特定部位(葉枕)の細胞の水分を他所へ排出して細胞の膨圧(細胞中の水などによって細胞壁にかかる圧力)を失うことにより、その部位の収縮が起こって葉は閉じ、葉柄は垂れる。おまけに枝葉には鋭いトゲがあり、根からは有毒アルカロイドのミモシンを出して、線虫からの被害を防いでいる。非常に用心深い植物と言えよう。目立つのを避け、名前まで消してしまったのか。

9月 キタキチョウ(北黄蝶) シロチョウ科

キタキチョウは、以前は単にキチョウ(Eurema hecabe)と呼んでいた、モンシロチョウよりも少し小さい黄色いチョウであり、本州~南西諸島(種子島・屋久島~波照間、与那国島など)の草原で普通に見られるチョウである。しかし、DNA 分析により、南西諸島にだけ棲息するキチョウのグループは、本土に棲息するグループと別種であることが分かり、2005年以降、2種に分けられた。そして本土に棲息するキチョウだけに、キタキチョウ(Eurema mandariana)と新名が付けられ、南西諸島にだけ生息するグループはキチョウ(Eurema hecabe)の名前のままとした。南西諸島では両種が混生している。それは良いとして、本土~南西諸島まで普遍的に生息するキチョウのグループをキタキチョウとし、南西諸島固有種に従来の名前を付けたのか、まったくもって納得できない。せめて、ミナミキチョウと名付けるべきでなかったか。

9月 カラスザンショウ(烏山椒、食茱茰、茱茰) ミカン科

古代中国では旧暦の9月9日は「重陽の節句」と呼ばれ、厄除けのための「茱茰」を髪に挿して郊外の高い山に登り、邪気払いの香り高い菊酒を親戚一同で飲み交わし、無病息災を願う「登高」の習慣があった。科挙の受験勉強のために郷里を離れ、都に独り住まいをしていた王維は、故郷の人達はいまごろ髪に茱茰を挿して登高し、菊酒を飲み交わしているのだろうなぁと、望郷の念をうたった「九月九日山東の兄弟を憶う」と題した漢詩を作賦している。そこで、厄除けのために髪に挿す「茱茰(しゅゆ)」とはどんな植物かが気になり、多くの漢和辞典・国語辞典で調べた。しかしどの辞典も、グミ、カハハジカミ、ゴシュユ、などとバラバラの植物名が記載されている。中国の各種本草書を和訳して日本で発刊された多数の本草書でも、茱茰の和名として色々な植物名があてられている。筆者は丹念に調べ、「茱茰」とは「食茱茰」の省略名であり、「食茱茰」とはカラスザンショウであることを解明した。そのむね、辞典を出版している多数社にメールで詳細論文を提出して、新刊を出す時は改訂をと要請した。どの会社もカラスザンショウであることを納得したが、編集は学者先生にお願いしているので、自分たちが勝手に訂正することはできないと、すげない返事であった・・・。こうなるとSNSを利用して世の中に知らしめ、間違いを正していく外はない。・・・どうでもいいことかなぁ。

9月 ツクツクボウシ(つくつく法師) セミ科

主に夏の終わりの残暑が残る頃に、夏が終わるぞ、終わってしまうぞとけたたましく「警告」を発するように鳴く。名前のとおりツクツクボ=シと鳴いているが、うるさいのを我慢して警告を注意深く聴くと、結構音楽的に多彩なリズムとメロディーであることに気がつく。まず、鳴き始めは、低く控えめにジージージー、ジュクジュクジュクジュクジュクと始まり、突然、ジュクジュクボーシと「ボーシ」の声高の部分が付け加えられるようになり、このジュクジュクボーシがしばらく長く続き、徐々にリズムが早くなる。すると、「ホーシ」の部分が声高で、ジュクジュクが低音なので、鳴き声はオーシンツクツク、オーシンツクツクと聞こえるようになる。徐々にテンポを早め、やがて大声でのオシオース、オシオース、オシオースと最後の叫びが続き、最終的にジイ―と低く長く鳴いて一楽章が終わる。イントロ、メロディ、エンディングの三部作で、なんとまぁ複雑な鳴き方をするのだろう、何のためなのか、感心してしまう。しかし、複数匹が競い合うように、ひっきりなしにツクツクボウシを叫びだすと、もういい、と言いたくなる。そんな気持ちを、俳人は「よし分かった 君はつくつく 法師である 池田澄子」と詠んだ。筆者は、「わかったヨ、テメェの名前は ツクツクボウシ!」と怒鳴りたい気分だ。

9月 イヌビワ(犬枇杷、イタビ) クワ科

ビワの実の形に似るが、ビワに比べて不味いことからイヌビワの名がある。しかし、ビワの仲間でなく、イチジクの仲間だ。雌雄異株で花嚢(イチジク状花)は4~5月に開花し、雄株の花嚢の中で花粉を全身につけて花嚢を飛び出たイヌビワコバチ(体長2㎜)のメスが、雌株の花嚢に潜入口から潜り込む。メスが潜り込むと潜入口は閉ざされ、メスは動き回り受粉が自動的になされる。花嚢は8月~9月に黒熟し、黒熟した花嚢(イチジク状果)は甘くておいしい。メスは寿命が尽きて死亡し、果嚢の中で消失する。一方、雄株では冬を除きほぼ通年、次々と新しく花嚢が出来る(ただし8~9月時点では花嚢が未熟)。雄株の花嚢はイヌビワコバチの産卵・成長・交尾の場で、大切な生活の場となっている。イヌビワコバチのオスは、生まれてより死ぬまで雄株の花嚢の中で一生を遂げる。メスのみが花嚢の外へ飛び出し、雌株の花嚢に潜り込むと受粉され種子も出来て花嚢は果嚢となり、黒熟して野鳥の到来を待つ。飛び出たメスが雄株の花嚢に飛び込むと、花嚢の中に産卵し、幼虫は花嚢を餌にしてイヌビワコバチに成長する。ゆえに、雄株では種子はできず、雌株のみで種子ができる。イヌビワコバチは雌株では繁殖できず、雄株のみで繁殖できる。イヌビワとイヌビワコバチは、こうした共生関係にある。世界にイヌビワ属の植物は700種ほどあり、そのどれもが、それぞれ独自のイヌビワコバチとの共生関係にあるようだ。なぜ、このような複雑な関係になっているのか・・・両者とも確実に子孫を後世に残すための秘策なのか。いや、イヌビワの作戦どおりなのだろう。

8月の植物 カクトラノオ(角虎の尾、フィソステギア) シソ科

北米東北部の原産で、明治時代末期~大正時代に日本に渡来した。対暑性も耐寒性もあり、陽当たりの悪い所でもよく繁殖して、ほぼ野生化しているのを見る。長い穂状の花序の下の方から徐々に咲き始める。日の当たり具合により株によって開花時期がズレるので、お盆の頃から10月末まで長いこと次々と開花する。花色は白~ピンク、薄紫があり、派手な花ではないが、蜜も花粉も充分にあるようで、色々な昆虫が集まる。チョウではキアゲハ、クロアゲハなどのアゲハチョウ類が訪れるが、モンシロチョウやヤマトシジミなどの中型~小型のチョウは吸蜜に訪れない。カクトラノオの個々の花は長い筒型なので、大型で蜜を吸う口吻が長いアゲハチョウの仲間でないと、花筒の底にある蜜に口吻が届かない。花の身としては、なるべく同じカクトラノオの花粉を運んで貰いたいわけで、そのため吸蜜可能者を限定することにより、カクトラノオの花粉をもった媒介者の訪れる機会を多くし、受粉確率を上げている。そんな企みをおくびにも出さず、しれっとした顔で今日も静かに咲いている。