自然観察園ご利用に際してのお知らせ

新型コロナウイルス感染防止対策のため開園時間が変更となっています。

開園時間
 火から金曜日:13時から16時まで
 土・日・祝日:10時から16時まで

入園に際してのお願い
・過去2週間以内に感染が引き続き拡大している国・地域への訪問歴がある場合は入園をご遠慮ください。
・体調不良の方は入園をご遠慮ください。
・マスクを必ず着用してください。
・人と人との距離(ソーシャルディスタンス)を十分に確保してください。
・消毒による貴重な生物への影響を考慮し、トイレは当面の間使用できません。
・管理棟内をご利用頂く際には検温をお願いしています。

8月の生きもの ニイニイゼミ

6月の終わりから7月の始め頃に現れる。動物の鳴き声を人間の言葉で言い表すのは困難だが、「チーーー」とも「ジージージー・・・・」とも聞こえ、少し離れて聞くと「ニーニーニー・・・・」と、細く高周波の金属音に聞こえる。小生の場合は、長年悩んでいる静かな耳鳴りの音と酷似している。
松尾芭蕉が「閑さや岩にしみ入る蝉の声」と俳句に読んだセミについて、歌人の斎藤茂吉はアブラゼミであると主張したことがあり、大論争が巻き起こった。芭蕉が山形市宝珠山立石寺を元禄2(1689)年5月27日(今の暦では7月13日頃にあたる)に訪れて俳句に読んだ史実を基に現地調査を行なった結果、7月13日ごろではニイニイゼミは鳴くが、アブラゼミはまだ鳴かないことが判明し、茂吉も非を認め論争は治まった。
他のセミと異なり、本種の抜け殻は泥だらけなことから、地面に湿気を好むセミと見られていた。1964年の東京オリンピックの頃から、東京の市街地では本種の数は極めて減少しつつあり、都市化による土地の乾燥によるものと推測されていた。ところが近年は、またニイニイゼミが増加してきているようで、その理由が分かっていない。まさか、先のオリンピックは見逃したから今度こそという訳でもあるまいし、自然のことは分かっていないことが多い。

8月の植物 タイタンビカス

花は20~25㎝の大輪で、草丈2~3mに成長する。一つの花は一日花であるが、株立ちした大株になると次々と開花するので、大きな花が多数咲いて、美しさと存在感に圧倒される。ハイビスカスの花を大きくしたような花姿で、繁殖・成長力の圧倒的な強さから、「巨神タイタン」に因んで「タイタンビカス」と名付けられたようだ。アメリカフヨウとモミジアオイの交配選抜種で、三重県津市の赤塚植物園が作出し、2009年から全国販売された全く新しい園芸品種であり、絶大な人気を誇っている。
だが、小生は名前が気に入らない。巨大で強靭だからタイタンは良いとして、ビカスとはなんだ?意味不明の言葉で、これではどんな植物かも想像がつかない。ハイビスカスのハイを省略し、更にビスカスのスを省略してビカス・・・・か。日本人がすきな省略語だ。和名もなく、どこの国の言葉でどんな意味かもわからないタイタンビカス、これがこの秀逸で見事な花の正式名称である。可哀そうだ。

7月の植物 ボタンクサギ

中国南部~インド北部原産の落葉低木で、樹高1~2m、地下茎から芽を出して広い範囲に茂る。梅雨時から夏にかけて、ピンク色の小花が直径15cmほどのボール状にまとまって咲く。綺麗な花だ。花には、ほんのりよい香りもする。開花する花が少ないこの時期には、クロアゲハ、カラスアゲハ、ナガサキアゲハなどが好んで吸蜜に飛来する。しかし、葉に触れると独特の臭気がムワーッと辺りに漂う。クサギ(臭木)の葉の臭いだ。クサギも本種も同じシソ科クサギ属なのだ。花はボタンのように綺麗だが、葉はクサギ(臭木)と同じ臭いなので、ボタンクサギの名になった。名を聞いただけで臭い木と推測でき、近寄るのが躊躇される。変な名前を付けられて悲しむべきか。
だが、気の毒な名前はもっとある。ママコノシリヌグイ、オオイヌノフグリ、ハキダメギク、ヘクソカズラ、ジゴクノカマノフタ・・・・。クサギの名前をつけた見返りに、バランスをとって綺麗な花の代表たるボタン(牡丹)の名も併せ付けたのだから、我慢してなァ~と、見るたびに声掛けしている。

7月の植物 フユザンショウ

冬になって、わずかながらも緑のままの葉を落とさないところからの名前。サンショウやイヌザンショウに比べ、葉は楕円形でなく披針形になり、ヌルデのように葉軸に翼がある。雌雄別株だが、日本では雌株しか存在せず、ヤマコウバシと同様に雌株だけで実をつけ単為生殖する。刺は大きく長いので、オニザンショウの別名がある。漢名は秦椒・竹葉椒。石灰岩や石灰分の多い地質を好むためか、火山灰地の東京近辺ではあまり見られない。中国では、食用として花椒(華北山椒)だけでなく、ほかの山椒も食べたり、薬用にしていた。麻婆豆腐には日本のサンショウでは辛みが足りず、ウナギの蒲焼には香り高い日本のサンショウの方が良い。中国ではカラスザンショウの新芽も食用にしていが、油を使った料理では、アクや辛みがマイルドになるからだろう。

7月の生きもの スズバチ

元来は東南アジアのハチで、1990年代に小笠原諸島で発見されたのが最初。現在では日本全土で見られる。枝には球形(鈴形の)、壁などにはお猪口をひっくり返したような形の巣を粘土で作り、その中に幼虫を産み、麻酔で眠らせたイモムシを餌として一緒に閉じ込める。いくつかそのような個室ができると、その全体を覆うように泥の覆いを作ってかぶせる(写真参照)。スズバチの幼虫はそのイモムシを食べて成長する。スズメバチ科に属するが、単独性の種で、人間に襲いかかる攻撃性は少なく、刺されても毒性は弱い。玄関の軒先やベランダの屋根などに、粘土製の巣をつくり、建物を汚すので、取り除くことをも考える。だが、この巣はこのままにしておきたい。というのは、オオセイボウ(大青蜂)という、青から緑色に美しく光る蜂が、このスズバチの幼虫に寄生して繁殖するからである。このオオセイボウの姿を見たいので、スズバチにしばらく軒を貸してやろうとの魂胆である。人間て・・・勝手だねぇ。因みに英名はJewel wasps といい、宝石蜂(腰の細くくびれた蜂)という。

7月の生きもの ツマグロヒョウモンのメス

オレンジ色の地に黒い斑点が並んだ豹柄模様の翅をもつ、いわゆるヒョウモンチョウの仲間は、日本では14種が見られ、主として日当たりの良い森林の周辺、草原、湿原、岩場などに棲息。スミレ類、ワレモコウ類などを食草として生活し、寒冷地を好む種類が多い。しかし、ツマグロヒョウモンは、他のヒョウモンチョウとは対照的に、インドシナ半島、オーストラリア、日本までの熱帯~温帯域に広く分布している。雄の翅の表側は一般的なヒョウモンチョウ類に典型的な豹柄だが、雌は前翅の先端部表面が黒紫色の地に白い帯が横断する模様となっている。全体に鮮やかで目立つ色合いで、これは有毒のチョウのカバマダラに擬態して身を守っていると考えられ、ひらひらと舞う飛び方も同種に似る。日本では、1980年代までは近畿地方以西に分布が限られていたが、徐々に生息域が北上し、2006年には関東地方北部でも定着するようになった。武蔵野市では春~秋にかけて、普通に見られるチョウになってきた。ナガサキアゲハと同様に、温暖化の指標生物になっている。一方、擬態する相手の毒蝶のカバマダラは、以前は南西諸島以南の分布であったが、近年は鹿児島県南部でも定着している。しかし、関東地方のツマグロヒョウモンは、守り神ナシで分布を広げていることになる。

7月の生きもの クサガメ

驚いたり、危険を感じると四肢の付け根にある臭腺から強烈な臭いを出すことからの名前。流れの緩やかな河川、池沼、水田などに棲息。18世紀末に朝鮮半島から移入されたものと考えられている。その後もペットとして輸入された中国産の個体が、近年各地で遺棄されて繁殖している。寿命は20年~30年以上、成長すると雌は30㎝以上になり、家庭内で飼育するのが困難となる。日本在来種のイシガメは、クサガメの繁殖により数を減らしており、クサガメもミシシッピアカミミガメ繁殖により、減数傾向にあるようだ。

7月の植物 オニユリ

日本、朝鮮半島、中国の平地~低山で見られる花であるが、日本では人里近くに限られる種である。ヒガンバナやシャガと同様に三倍体のため、種子はできず、葉の脇にできるムカゴ(珠芽)で繁殖する。朝鮮半島に二倍体があり、対馬には二倍体が多く自生し三倍体と混生する。このことから、古い時代に食用として朝鮮から渡来したと考えられている。珠芽の形成に栄養を取られ、親の球根があまり大きくならないので、現代では食用のユリネは、同じ仲間だが珠芽をつくらないコオニユリが栽培・供給されている。花色が濃橙色で花弁が後ろ向きに反り返っている姿なので、怒った赤鬼を思わせることからついた名前と思われるが、可哀そうだ。とは言え、日本では、濃紅色~淡紅色の花弁をもつ草花は非常に多いが、濃橙色や赤色の花は極めて少ないため、違和感を覚え毒々しく感じる。草丈2mにもなるオニユリが、多数の花をつけ、しかも毒々しい濃橙色の花弁の先端をそり返させた花姿に出会うと、正直言って、筆者も少なからずギョッとする。

7月の植物 ノリウツギ

樹高2m~5mになる落葉灌木で、枝が細く長く伸びて先端の重さで倒れ、つる植物のように見えることもある。樹皮から粘液をとり、和紙を漉くときのコウゾなどの繊維の分散・浮上材(ネリ)として使用したことからの名前で(ネバリ⇒ネリ⇒ノリ)、別名ノリノキ、北海道でサビタという。現在ではノリウツギに代わり、より粘度の高いトロロアオイの根から抽出した粘液や化学糊を使うことが多くなったが、粘度の高いガンピ(雁皮)から和紙をつくる場合は、より低い粘度のノリウツギを使うことが多いようだ。全国手すき和紙連合会の調査では、漉き手がネリとして使用するものとして、トロロアオイは約60%、化学ネリは13%、ノリウツギは10%弱とのことである。アジサイと同様に、花房には萼が変化した装飾花が混在し、花が枯れてからも茶色くなって翌年以降まで残る。ある村の美しい乙女が、若者からプロポーズされたが、それをお断りするのに、乙女は「この花が散る時がきたらお返事します」と答えたそうだ。若者は燃ゆる思いで返事を待ち焦がれたが、いつまでも返事がもらえなかったという話がある。

7月の生きもの オイカワ

水流が速く日当たりの良い川の、平瀬を好んで生息する。本来は琵琶湖産であるが、琵琶湖のアユやゲンゴロウブナ(ヘラブナ)の放流に伴い、分布が広がり、繁殖した。そのため、シラハエ(近畿)、ヤマベ(関東)、ジンケン(東北)など、各地での地方名が多い。姿がきれい、引きがよい、味がよいので釣魚として人気が出た。筆者が小学生の頃、よく親父がヤマベ釣りに連れて行ってくれた。酒匂川(神奈川)、養老川(千葉)、秋山川(山梨)などの、緑あふれる清流で1日釣りをして過ごした。今では、全国的な河川改修と経済成長により、河岸の景色は、住宅地、工業団地、ダムのバックウォター化などにより様変わりした。岸辺のレンゲやナノハナ、ヒバリの囀り、眠たそうにモォ~と聞こえてくる牛の鳴き声など、のどかな別世界の中の清流は消えてしまった。