自然観察園ご利用に際してのお知らせ

新型コロナウイルス感染防止対策のため開園時間が変更となっています。

開園時間
 火から金曜日:13時から16時まで
 土・日・祝日:10時から16時まで
 月曜日(祝日を除く)は休園となります。

入園に際してのお願い
・過去2週間以内に感染が引き続き拡大している国・地域への訪問歴がある場合は入園をご遠慮ください。
・体調不良の方は入園をご遠慮ください。
・マスクを必ず着用してください。
・人と人との距離(ソーシャルディスタンス)を十分に確保してください。
・消毒による貴重な生物への影響を考慮し、トイレは当面の間使用できません。

11月 ナナフシモドキ幼虫

観察園で飼育しているナナフシモドキのたまごから幼虫が孵化しました。大きさは1cm程度ととても小さいです。

11月 カジノキ(梶の木、構、古名タク)クワ科

 日本では中部地方南部以西の本州~沖縄に分布する落葉高木であるが、中国ほかアジア全体に見られる植物である。クワやコウゾの葉と酷似しており、若木では見分けが難しい。成長が早く、観察園に15㎝ほどの枝を挿し木したものが10年ほどで、高さ4m、幹回り45㎝の高木になった。昔からコウゾやヒメコウゾと間違われており、その結果、シーボルトはコウゾの学名にBroussonetia kazinokiと種名にカジノキとつけている。

 カジノキは、樹皮の繊維が強靭であるため、衣服や紙の材料として昔から使われており、メコン川流域の原産のようだが、民族の移動とともに移植され植え広がった樹木のようだ、フィジーほかオセアニア諸島では、樹皮を木槌で叩いて平たく伸ばし、薄い布を作っていた。現在では「タパ」と呼ばれる民族衣装に使われている。一方、中国では樹皮から細い繊維の糸を取り出し、織物を作っていた。七夕の織女が織っていたのはカジノキの繊維だ。そのため日本で江戸時代までは、願い事をカジノキの葉に書き記し、笹の枝に括り付けていた。

 調べていて、ここまでは自分が納得できたが、諏訪大社の神紋がなぜカジノキなのかの疑問が生じた。カジノキの古名は「タク」であるが、諏訪大社と関係の深い出雲市には多久町,多久谷町が存在している。もしかしたら古い時代に、出雲地方にタクの国が存在していたのではないかと想像した。大和族からの国譲りの要求に対する条件として出雲族の大国主命は高層で巨大な出雲大社の建造を条件としたが、大国主命の次男のタケミナカタトミノミコト(建御名方富命)は反対して戦い、敗れて諏訪地方に逃げた。しかし「タク」の国を懐かしみ、カジノキを神紋とし、高層の出雲大社を偲び、諏訪大社の御柱祭で大きな樹木を運ぶのも、その片鱗ではないかと想像が膨らんだ。

 市井の一布衣の老人に過ぎない筆者には、それ以上真実を見極める学問も財力もない。カジノキは、見かけは極めて普通の落葉樹であるが、背負っている歴史には、とてつもなく長く深い物語がありそうだ。

10月 クスノキ クスノキ科

 クスノキは台湾、中国南東部、ベトナムといった暖地に自生し、それらの地域から日本に渡来した史前帰化植物と言われている。今では常緑高木のうちの1種類の樹木としか一般的には認識されていないが、明治時代は国運を左右する、大変重要な樹木であった。

 クスノキから水蒸気蒸留で防虫・防黴剤として樟脳が採れることは知られていたが、1870年にアメリカのハイアット兄弟が、樟脳からセルロイドを作ることに成功した。成形自由な材料なので、食器、ナイフの柄、万年筆、眼鏡フレーム、映画フィルムなどの材料として19世紀後半の工業製品に一大変革をおこし、膨大な需要が生じた。

 日清戦争後、1895年から台湾を領有した日本政府は、台湾に茂るクスノキを用いた樟脳の生産販売の専売制度を敷いた。世界の樟脳生産の80%を占め、政府の大きな財源となった。しかし三国干渉により日露戦争が不可避となったので、バルチック艦隊に対抗するため、最新鋭の戦艦12隻を一度に英国などに発注し、ロシアに戦勝した。その戦費は英国と米国からの借入金であったが、樟脳という担保の裏付けがあったから出来たことである。

 そして、第一次世界大戦の頃には、西欧に沢山自生するモミやトウヒなどのマツ科植物からとれる「松ヤニ」から、プラスチックを製造する技術が発明され、第二次世界大戦の頃には、石油からプラスチックを合成する技術が発明された(ゆえにプラスチックの日本語は「合成樹脂」となっている)。これらの技術により、セルロイド・樟脳の需要は激減し、国難を救ったクスノキの価値も忘れられていった。

 しかし、明治神宮の参拝殿の左右に植栽されているご神木は、クスノキであり、日本各地に残る日露戦争記念樹もまたクスノキである。JR青梅駅の近くにある永山公園には、日露戦争で戦死された兵士の魂を祀る「忠魂碑」があるが、そのすぐ後ろには、クスノキがなぜ自分がここに植えられたか、何も語らず、シレっとした姿で、現代の風に葉を揺らして我々を眺めている。