12月 センダンの実(栴檀、楝の実)センダン科

 11月も終わりの頃になると、センダンの木は殆ど葉を落とし、枝には直径1~2㎝で黄褐色の実が非常に多くぶら下がって大変目立つようになる。センダンの名は平家物語で「栴檀は二葉より芳しとこそ見えたれ」と記されて以降有名になった。しかし、この香木として有名なのはインド原産のビャクダン(白檀)のことで、日本原産のセンダンとは異なる。日本のセンダンは、「アフチ、オオチ、=漢字は楝」と呼ばれていた樹木であり、沢山の実をつけるので果実を団子に見立てて「千団子」とも呼ばれていた。

 さて、天台宗の三井寺では護法善神として鬼子母神を本尊としている。鬼子母神は自らの子どもが千人もおり、人間の子どもを食料として与えていた鬼神であるが、仏教に帰依して後、子どもを授け、育て、守る善神となった。ゆえに三井寺では多くの子供を守るため、千個の団子を供える千団子祭(千団子講)が行われるが、この千団子講・千団講が同音の栴檀講となり、やがて樹木名の「アウチ、オオチ、千団子」の千団子と結びついて、「千団子」の木が「栴檀」の木となったようだ。

 日本のセンダンは香木ではないものの、薬用植物として重宝された。果実は 苦楝子(くれんし)と称し、しもやけに外用し、整腸薬として煎じて内服した。また、樹皮は苦楝皮(くれんぴ)と称し、駆虫剤として煎液を服用するほか、樹皮は漁に使う魚毒にも使われていた。つい最近のニュースとして、琉球新報の報道では、センダンの葉から抽出した成分が、がん細胞のオートファジー(自食作用)を促して、最終的にがん細胞を殺す効果があることが発見されたようだ。

 そして、林業面でも注目されている。スギやヒノキは植えてから板材として利用できるまで40~50年かかるが、センダンは15~20年で直径30~40㎝の板材が得られるほど成長が早く、材質は堅くてケヤキに似ており、内装材や家具材に適していることから、近年、板材採取を目的として植林され始めている。「雑木」がにわかに、「高級木」になり替わろうとしているように思える。要注目の樹木だ。