7月の生きもの ツマグロヒョウモンのメス

オレンジ色の地に黒い斑点が並んだ豹柄模様の翅をもつ、いわゆるヒョウモンチョウの仲間は、日本では14種が見られ、主として日当たりの良い森林の周辺、草原、湿原、岩場などに棲息。スミレ類、ワレモコウ類などを食草として生活し、寒冷地を好む種類が多い。しかし、ツマグロヒョウモンは、他のヒョウモンチョウとは対照的に、インドシナ半島、オーストラリア、日本までの熱帯~温帯域に広く分布している。雄の翅の表側は一般的なヒョウモンチョウ類に典型的な豹柄だが、雌は前翅の先端部表面が黒紫色の地に白い帯が横断する模様となっている。全体に鮮やかで目立つ色合いで、これは有毒のチョウのカバマダラに擬態して身を守っていると考えられ、ひらひらと舞う飛び方も同種に似る。日本では、1980年代までは近畿地方以西に分布が限られていたが、徐々に生息域が北上し、2006年には関東地方北部でも定着するようになった。武蔵野市では春~秋にかけて、普通に見られるチョウになってきた。ナガサキアゲハと同様に、温暖化の指標生物になっている。一方、擬態する相手の毒蝶のカバマダラは、以前は南西諸島以南の分布であったが、近年は鹿児島県南部でも定着している。しかし、関東地方のツマグロヒョウモンは、守り神ナシで分布を広げていることになる。