中国山東省以南~マレー半島原産で、日本には江戸時代初期に中国から渡来した。本種は中国名の秋海棠の音読みが名前になった。8月10月にかけて日陰で咲く。江戸時代の本草学者・儒学者である貝原益軒の『大和本草』1709年の巻七・草の三には、「寛永年中、中華ヨリ初テ長崎ニ来ル。ソレヨリ以前ハ本邦ニナシ。花ノ色海棠ニ似タリ。故ニ名ツク」と記している。この解説に難癖をつければ、花の色が春に咲く海棠に似ているだけでなく、花を下向きにつりさげて咲く姿も似ているからだと思う。歌人や茶人に好まれ、俳聖と呼ばれる松尾芭蕉は「秋海棠 西瓜の色に 咲きにけり」と詠んだ。再び難癖をつければ、秋海棠がピンク色に咲いたというだけの俳句で、これでは同じ時期まで咲いているサルスベリでも良い。「百日紅 西瓜の色に 咲きにけり」でも良いはずだ。上記解説も俳句も、なんとなく素っ気なさを感じる。日陰につましく咲いている秋海棠に愛おしさを感ずるも今一つ心を動かすものがない、影の薄い存在なのだろうか。