1月下旬に入って、春めいた陽気の日も出てきた。そんな気温の上昇をいち早く感じてか、フクジュソウが咲き始めた。オッとぉぉ~!今、無意識にフクジュソウと書いたが、従来1種類だけと思っていたフクジュソウは、最近4種に細分類されたのだった。
①北海道から本州、四国に分布するフクジュソウ(別名エダウチフクジュソウ、Adonis ramosa、ramosa=枝が多いの意)。染色体=4倍体
②東北地方のみならず、本州から九州にかけて自生するミチノクフクジュソウ(陸奥福寿草、Adonis multiflora、multiflora=花が多いの意)、2倍体。
③北海道東部に稀産するキタミフクジュソウ(北見福寿草、Adonis amurensis、amurensis=アムール地方の)。2倍体。
④四国(徳島、高知、愛媛)と九州(宮崎)に稀産するシコクフクジュソウ(Adonis shikokuensis、shikokuensis=四国地方の)。2倍体の4種である。
上記のほかに、
⑤一般的にフクジュソウと言われ普及しているフクジュカイ(福寿海)と呼ばれる園芸品種がある。フクジュソウが大人気であった江戸時代初期以降、100種以上の園芸品種があった。そうした数ある品種の中で、フクジュカイは、大輪で多くの花を咲かせ強健なため、一般化され、広く栽培されていた。現代でも園芸店などで入手するのは、この園芸品種である⑤フクジュカイの可能性が非常に高い。種子が殆どできず、そのためか①フクジュソウと②ミチノクフクジュソウの交配種と見られている。
⑥青梅近辺に自生するのでオウメソウ呼ばれるフクジュソウである。①フクジュソウの原種であるという見方と、数ある①フクジュソウの園芸品種の1つであるという見方がある。青梅に自分の持ち山があり、そこで栽培している方からいただいたものが、観察園にもある。花は一重咲き、花色は少し黄緑色の楚々たる風情の花で、花と葉が一緒に出てくる。枝葉や花数は少なく、いかにも野生種の感がある。
さて、写真では見分けづらいが、この花を②ミチノクフクジュソウと断定した。それは花弁の下に隠れている萼片が、花弁の長さの1/2以下であり、①フクジュソウの萼片は花弁と同等の長さか、少し短い程度という識別ポイントに従ったものである。園芸店からフクジュソウとして購入したのだが、実は②ミチノクフクジュソウであった訳だ。園芸店でもそうした見分けをせず、(総称)フクジュソウで販売しているのが実態である。
そこで気になるのは、①フクジュソウの染色体のみがなぜか4倍体で、②~④は2倍体であることだ。則ち、今①フクジュソウと呼ばれている個体が、本当に原種なのか、それとも⑤フクジュカイあるいはそれに近い園芸品種なのかの疑問である。古い時代に⑤フクジュカイは広く販売・栽培されたので、原種の①フクジュソウと思っていても、園芸品種である可能性もある。①と⑤の見分けの識別ポイントが明らかでない。従って、観察園にて②ミチノクフクジュソウと⑥オウメソウは間違いないと思われるが、フクジュソウと名札を付けた個体は、今のところ①か⑤の識別が、恥ずかしながら出来ていない。それゆえ総称としてのフクジュソウと理解してもらうほかはない。間違いのない①と⑤を購入して、自分なりの識別ポイントを探そうと思う。