1月 コショウノキ(胡椒の木)ジンチョウゲ科

 コショウノキという名前だが、胡椒(ペッパー)が採れる木ではない。中国原産のジンチョウゲの仲間である。図鑑などの情報では、関東地方以西の太平洋岸~沖縄の、林内にやや稀に自生し、果実(有毒)が胡椒のように辛いことが名前の由来とある。筆者はこの苗を大分県佐賀関半島の、蛇紋岩の砂利が多い黒ケ浜近くの海岸林の樹下でみつけて、観察園で育てた。冬の1~2月に沈丁花に似て白い花が咲き、6月頃にクコ(枸杞)の実のような楕円形の赤い液果が実った。

 では、なぜコショウノキという名前がついたのか疑問が湧いた。思いついたのは、九州では唐辛子のことをコショウと呼ぶことだ。トウガラシはコロンブスによって米大陸から西欧に持ち込まれ、ポルトガル人により安土桃山時代頃に日本に持ち込まれ、栽培され始めた。唐から渡来した胡椒(=中国名で、胡の国の山の辛い実の意味)に対し、南蛮船によってもたらされたので、当初は南蛮胡椒とよばれた。胡椒は輸入品で高価なため、日本ではあまり普及しなかったが、唐辛子は全国に普及し、略称として東北・北海道ではナンバン、九州ではコショウ、と呼ばれるようになった歴史がある。

 辛いからコショウノキ(南蛮胡椒の木=唐辛子の木)と呼んだのか、赤い実の形から唐辛子を思いついたのか、確認したくなった。図鑑には有毒とあるので、恐る恐る一粒を口に入れた。辛くはなく、ほんのり甘い!!中の種子を噛み潰したが、無味であった。辛さからではなく、実の形から唐辛子を想像し、コショウノキと名付けたと推測した。

 だが、この判断は間違っていた。筆者と同様に好奇心から口に入れた御仁がいて、舌に猛烈な痛みが出て水泡が出来たとの、真実味のある情報が見つかった。ジンチョウゲ(Daphne odora)と同様に、ダフネチン(Daphnetin)という毒成分があり、舌に炎症を起こし、辛みというよりも強い痛みを感じたようである。

 小生はパン食の時でも水分を必要としないほど唾液が良く出るタチなので、すぐ吐き出したから毒成分の被害をうけなかったのだろう。今年は、痛みを覚悟して、しばらく口の中に入れて、辛さ(痛み)を確認してみたいと思っている。・・・・・物好きなヒマ人だねぇ。