山地の林内や林縁部に生える常緑のつる性の多年草。大きく成長すると、茎は木質化する。8~11月に白い花を咲かせ、楕円形でアボカドと同程度の大きな果実が出来るが、熟するのは翌年の秋。約1年かけて果実が熟すると果実は割れて、中から長さ2~3㎝にもなる白くて長い種髪をつけた種子がムワァーと飛び出す。その様子を長毛白髪を振り乱した鬼女の狂乱状態にみたてて、キジョラン・鬼女乱、否、鬼女蘭の名がついた。しかし、蘭の仲間ではなく、毒草のガガイモの仲間で、アサギマダラという蝶の食草となっている。この種髪は長くて軽いので、息を潜めて注視している人の、呼吸による僅かな空気の動きでも、その空気の流れで種髪は生き物のように動き出す。
江戸時代以降の民間伝承で、謎の未確認生物とされているものに「ケサラン・パサラン」がある。この正体はキジョランの種髪である可能性が高いと思う。だが、「持ち主に幸せが舞い込む」と信じられ、ケサラン・パサランを大切に保管している人もいるようだから、むやみに種明かしするのは止めておこうか・・・・。