8月の植物 オニドコロ

トロロ汁で親しんでいるヤマノイモ(ヤマイモ、自然薯)と同じ仲間であるが、本種のイモは苦くて有毒。ヤマノイモの葉はふつう対生(稀に互生)し、葉身は三角状披針形で、基部が凹んだ細長いハート形である。雌雄異株で雌株は葉脇にムカゴを作る。花は白色。一方、本種の葉は互生し、葉身は幅の広いハート形で、葉脇にムカゴを作らない。花は黄緑色。ヤマノイモのイモは円柱状だが、本種のイモは生姜の根のように膨らんだ場所と縮んだ場所がありのデコボコで、髭根が非常に多い。昔は単にトコロ(土古呂、都古侶)と呼ばれていたが、後世に、体が曲がりヒゲのある海の老人は「海老」、トコロは根茎が曲がってヒゲ根が多いので野の老人だとして「野老」の字が充てられた。オニドコロの根は、長寿を願ってとも、トコロ(所領)の安堵を願ってとも言われ、正月飾りに欠かせないものとなった。
ところで(!)、埼玉県の所沢市は、トコロが沢山自生していたからの地名と言われているが、どうも怪しい。アマドコロ、ハシリドコロなど、名前にトコロとつく植物は他にもある。気になりいろいろ調べた。共通項は根がゴツゴツとしてデコボコになっていることだ。縄文語と見られるポリネシア語ではトコル(ルは接尾語)は「膨らむ」、「盛り上がる」、「嵩が増大する」などの意味があり、床の間も寝床も一段と盛り上がった場所にある。所沢は、柳瀬川、東川、不老川などによる浸食から逃れて、一段高く残っている台地(武蔵野台地)の意味ではなかろうか?