8月の生きもの ヒメアカタテハ(姫赤立羽)

関東では夏から秋にかけて見かけることが多くなる種で、ツマグロヒョウモンの雌によく似ている。日当たりの良い草原や田畑の周辺などでよく見られる。食草はハハコグサ、ヨモギなどのキク科、カラムシ(イラクサ科)、ゼニアオイ(アオイ科)、ダイズ(マメ科)など、チョウとしては珍しい雑食性(寡食性)がある。本種は日本全国、北海道~沖縄まで分布しているだけでなく、北極圏からアフリカ、オーストラリアまで、南極大陸を除くすべての大陸に分布する、広域分布種、汎存種、現代風に言えばコスモポリタンである。
西欧では西アフリカを春に飛び立った本種は、世代交代しながら約15,000キロ北方のアイスランドまで分布を広げ、夏の終わりに、何百万匹という群をなして高度500mの上空を平均時速45キロで、南を目指して帰ることが最近判明した。この「渡り」をするチョウとしては、メキシコ~カナダ4,800キロを往復するオオカバマダラ、長野県~台湾2,500キロを往復するアサギマダラが知られているが、日本では本種の「渡り」については認識不足であった。だが、去年(2019)8月5日、午前1時~3時ごろ、新潟県粟島の北17キロの海上で集魚灯をつけた釣り船に、1万匹ほどのヒメアカタテハが集まった。北上する「渡り」の途中であったと考えられるが、夜間に大群で渡りが行われるという新しい発見に、昆虫学者達は衝撃を受けている。