8月の植物 ナガイモ(長薯)

ナガイモはヤマノイモ(自然薯)と葉の形がよく似ている。ヤマノイモの葉形は縦長のハート形であり、ナガイモも同様に縦長のハート形であるが、葉身の基部がヒルガオの葉のように左右に少し張り出している。ハート形というよりも、古代武器の、ほこ(鉾、矛)の穂先に似た葉形というべきか。スーパーなどで、真空パックされたぶつ切りのイモが販売されているが、これはナガイモであってヤマノイモがこのように販売されることは稀有。ナガイモは1年の栽培で出荷できるほどイモが太く大きくなるが、ヤマノイモは5年ほどかかり(10㎝/年程度の成長)、ナガイモの3~5倍の価格で売られている。成長が遅いだけに、ヤマノイモはナガイモ類(ツクネイモ、イチョウイモなどを含む)よりも味が濃厚で強いネバリがある。広重の「東海道五十三次」には、東海道20番目の鞠子宿(丸子宿)を描いた作品があり、それには「名物とろろ汁」の立て看板がある茶屋(丁子屋)が描かれている。丁子屋は慶長元年(1596年)の開店以来、400年以上の年月を現在と同じ場所(静岡市駿河区丸子)で営業している。途中、富士山の噴火、明治維新、大震災、戦争があったが、店を続けている粘り腰には敬服する。ヤマノイモは滋養強壮材として有名で「山ウナギ」の別名もあるが、ナガイモも夏バテに効くようだ。今夜は生のままとろろ汁か、短冊切りにして食べてみよう。