11月 ホトトギス(杜鵑草)ユリ科

 花弁の赤紫色の斑紋が、ホトトギス(野鳥)の胸の斑紋と似ていると見て付けられた名前と言われている。このホトトギス属の植物は日本には13種が分布しており、このうち11種は日本だけに生育する日本固有種で、日本列島を中心に分布していることから、日本が原産で、分化の中心地であると推定されている。いずれの種も山野の林下や林縁、崖や傾斜地などの、日当たりの弱いところにひっそりと自生する多年草である。その中で基本種のホトトギスは暗い赤紫の花色で、その渋くて静かな風情が茶花として大変好まれている。

 一方、野鳥のホトトギスは、昔から注目されていて様々な文書に登場し、杜鵑、郭公、杜宇、蜀魂、不如帰 、時鳥、子規、田鵑、霍公鳥、獲穀など異名が多い。ものの本によると、万葉集にはホトトギスを詠んだ歌が156首、古今集に43首、新古今集に47首あるようだ。話は横道に逸れるが、筆者はホトトギスとカッコウ(閑古鳥)が混同されていたように思う。両者ともカッコウ科の鳥で、胸に横縞の模様があり、托卵の習性があり、初夏に現れ、囀りの時間帯も夜半過ぎから早朝で、似ているところが実に多い。ホトトギスの漢名の郭公、霍公鳥、獲穀などを音読みすればカッコウの鳴き声である。

 結核で喀血に悩まされていた正岡子規は、唐の詩人白居易の「琵琶行」という詩の一節「杜鵑啼血猿哀鳴」の啼血(血を吐いて鳴く)」からホトトギス(子規)という俳号を選んだのであろう。

  さて、日本ではホトトギスの胸の横縞模様とユリ科のホトトギスの花弁の模様が似ていると見て、野鳥とおなじホトトギスの名をつけた。だが、欧米では、その模様をガマガエル(ヒキガエル)の腹の斑点に似ていると見て、Toad-lilyと名付けた。則ち、ガマユリである。もし、日本でもガマユリの名がつけられていたら、茶花として好まれていたかどうか。