マメ科の多年草で、草丈は1mほどにもなるが、草丈の半分は細くて長い花穂である。茎の先端の方から数本の細長く硬い花径を伸ばし、穂状の花をつける。茎の下方に多く集まる葉は三出複葉で、その頂小葉には葉柄がある。花は3~4㎜のピンク色の小さな花で目立たない。種子は二つにくびれた豆果の莢に包まれている。莢の上辺は直線で、下辺は円形に膨らんでいる。通常、莢は2つにくびれて、くびれのところで容易に折れて2つの莢に分離する。このことから節果と呼ばれるが、莢の表面にはマジックテーテープにあるような先端が曲がった毛が多数生えており、動物の毛や人間の服に容易にくっつき、剥がれない。いわゆる「ひっつきむし」の代表格である。
この分離した莢の半円状の形を、盗人が足音をたてないように、爪先立って歩いた足跡に似ていると見て、「ヌスビトハギ」と名付けたようだ。泥棒の足跡の形だと納得できる人はそうはいないだろう。2つに分離する前の莢の形は、現代風の眼鏡の形に似ている。「メガネハギ」と名付けてもよかったように思うが、昔の眼鏡は串団子のように円形を二つ並べた形なので、眼鏡は思いつかなかったのだろう。もっとも似ている形は、筆者はブラジャーだと思うが、「ブラハギ」の名をつけると「ブラ剥ぎ」に通じるので、その名はさすがにつけられない。