11月 オオバヤシャブシ(大葉夜叉五倍子)の果穂 カバノキ科

 11月の月末になると、ふつう落葉樹は紅葉・黄葉して落葉していくがオオバヤシャブシは、色をかえずに緑色のまま落葉する。名前も小難しい名前だ。この樹木の仲間には、本種のほかヤシャブシ、ヒメヤシャブシ、ハンノキ、ケヤマハンノキなどがあり、その中で葉が大きいことからオオバ(大葉)の名がある。

 ヤシャ(夜叉)とはインド神話にある鬼神の名前。毘沙門天の従者で護法の神として人間に恩恵をもたらす一方で、人を食らう鬼神の性格も併せ持っており、森林に棲む神霊であり、聖樹と共にあるとされる。

 最後のフシ(附子、フシは通常、五倍子と書かれる)は、ヌルデの木の葉にできる虫こぶ(虫瘤、虫癭)のことで、この虫こぶには多量のタンニンを含むので、草木染の染料にするほか、歯槽膿漏予防のためのお歯黒に使用された。オオバヤシャブシの果穂も多量にタンニンを含み、草木染の他、革製品や象牙細工の染料に使われた(八丈島の特産品の「黒八丈」はオオバヤシャブシの果穂を染料として使っている)。

 また、オオバヤシャブシは、空中窒素を固定するフランキア菌と共生し、やせ地でも旺盛な生育をするので、治山や砂防事業の緑化木、窒素を固定するので、土地を肥やす肥料木として、よく植栽されてきた。観察園では、小さな松ぼっくり型の果穂が、クリスマスリースやスワッグの飾りとして欠かせない存在であり、大切に育てている。

 だが、近年、花粉が口腔アレルギーを引き起こすことが分かり、人口密集地では伐採する動きにあるようだ。観察園ではどうするか、・・・・・悩ましい。