10月 オオバナオケラ(大花朮)キク科

 写真の花はオオバナオケラ(Atractylodes ovata)で中国の湖南、湖北、江西、浙江、安徽など中国中部に分布する。日本で見るオケラ(Atractylodes japonica、ウケラ )は花弁が白色で基部が淡紅色の、アザミ似た筒状花が房状に集まった花を咲かせる。本州~九州、朝鮮半島、中国東北部に産し、日当たりがよく水はけがよい丘陵地や山地に生える多年草で、その頭状花は、魚の骨を想起させる苞に囲まれた特異な形状をしている。 特異な花の色と形状は、古くから注目されたようで、「恋しけば 袖も振らむを武蔵野の うけらが花の 色に出(ず)なゆめ:恋しくなったら袖を振りましょう。武蔵野のオケラの花のように、表だって悟られるようなことをしないでください」をはじめ、万葉集に3首が歌われている。
 オケラの根茎は、精油成分を含み、主な成分は、アトラクチロジンで、健胃・整腸剤として、古くから朮(じゅつ)という生薬として利用された。また屠蘇散にも用いられる。「山でうまいはオケラにトトキ…」と俚謡で唄われるほど、新芽は山菜としてよく知られている。7月のツリガネニンジン(トトキ)の項で述べたが、オケラもさほど美味しいものではない。