5月の花 ドクダミ

ドクダミ(蕺草)は古くから民間薬として広く知られ、薬効が多いことから毒ダメ(毒溜め)、ジュウヤク(十薬)とも呼ばれる一方、草全体の独特の臭気が嫌われギョセイソウ(魚醒草)、ジゴクソバ(地獄蕎麦)などの悪名もある。一般的には嫌われる臭気であるが、「良い匂い」と感じるヒトもいて、手で香りを鼻に向けて扇いで幸せそうな顔をした女性に出会ってギョッとしたことがある。しかし、我々はマツタケの香りを「良い匂い」と感じて幸せな顔をするが、西洋人は「履き続けていた靴下の臭い」「数カ月風呂に入っていない不潔なヒトの臭い」と感じて、我々をギョッとした顔で見ているに違いない。

5月の花 ハナワギク

北アフリカのモロッコ原産の一年草で、春菊の近縁種。春菊は花弁は白で基部は黄色であるが、ハナワギクは花弁の基部が黒っぽい蛇の目模様になり、花弁はくすんだ黄色、樺色、ベージュなどの色合いのものが多く、一つの花が3色になるものもある。欧米では一般的な花であるが、くすんだ花色だからか、苗が入手できないからか、日本ではあまり普及していない。春菊と異なり、食べるとお腹をこわすことがあるようなので、野菜を作っている場所には植えない方が良い。

5月の花 ヤマアジサイ・黒姫

ヤマアジサイ
ヤマアジサイ・黒姫 アジサイ科

クロヒメヤマアジサイと呼ぶと、日本海側に多いエゾアジサイと勘違いするが、花が濃い青紫色で茎は黒みを帯びるところからクロヒメの名がついたヤマアジサイの園芸品種である。ガクアジサイの花がすべて装飾花となった通称アジサイは華やかだが、床の間に飾るには、気品が感じられるヤマアジサイ黒姫が適しているように思う。

5月の花 カワラナデシコ

主に日当たりの良い草原や河原に生育し、可憐で愛らしい花であるゆえに撫で撫でしたくなる花の「撫でし子」が本種の名前となったと言われている。万葉集にも謳われている秋の七草の一つで、古くから親しまれている身近な草花だった。平安時代に中国原産のセキチク(石竹)が渡来し、「唐なでしこ」と呼ばれたので、本種は「大和なでしこ」、「河原なでしこ」とも言われるようになった。昔は蛇行している川が多く河原が多く見られた。また、屋根材として茅(ススキ)を使い、牛馬の飼料にもしたので茅原も多く見られた。こうした草原は野焼きや草刈りで陽当たりのよい草原環境が保たれたので、ナデシコは里地・里山の身近な花だったが、人間の生活習慣の変化などで、河原や草原が姿を消した結果、今では多くの県で絶滅危惧種になっている。

5月の花 ムシトリナデシコ

ムシトリナデシコ
ムシトリナデシコ ナデシコ科

ヨーロッパ原産の越年草で、茎上部の葉の下に、粘液を分泌する部分が帯状にあり、これに虫が付着して捕らえられることがあることからの名前。付着して捕獲された昆虫を消化吸収する食虫植物ではない。花の蜜を盗むだけで効果的な受粉を行わないアリが茎をよじ登り花にやってくるのを防ぐためか、あるいは、受粉に効果のあるチョウやアブを捕獲するクモやカマキリの接近を防ぐためであろうと考えられる。そのことを知っているのか、多くのチョウがこの花に訪れ、じっくりと蜜を吸っている姿を見ることが多い。ナデシコに似て可憐な花であるが、したたかな知恵を持っている。

5月の花 ヤナギラン

ヤナギラン
ヤナギラン アカバナ科

葉はヤナギに似ていて、花はシランの花に似ていることからの名前。冷涼な高原で群落をなし、盛夏の草原をピンク色に染める様は風物詩となる。西欧・アジア・北米などの北半球の温帯~寒地に広く分布する植物で、特に山火事の跡地、森林伐採跡地、スキー場などの裸地にいち早く侵入して大繁茂するが、他の植物が生育してくると群落が、蜃気楼のように消えてしまう。山火事の多い北米では、火事場跡の雑草(Fire Weed)と呼ばれ、ロシアでは一般的なハーブティ(Ivan-chai イワン・チャイ=普通茶の意味)の材料として、大量に花と葉が刈られている。日本では本州中部以北の高原や北海道で見られるが、近年、温暖化のせいで植物の成長が早いからか、シカ害によるものなのか、ヤナギランの群落地が少なくなり、埼玉県、宮城県、栃木県、山形県、宮城県、秋田県では、絶滅危惧種に指定されている。東京の市街地でヤナギランを栽培するのは難しく、気を使って栽培しているが、この花も蜃気楼のように、来年は消えてしまうのだろうか。