6月の生きもの オオシオカラトンボのオス

開けた明るい水面を好むシオカラトンボに比べて、オオシオカラトンボは樹林の縁に囲まれた池沼・湿地など、木陰となり少し薄くらい環境を好んで生活する。シオカラトンボは、腰から下が急に細くなっているが、本種は尾の先までほぼ同じ太さ。オスは全体的に青みがかっており、腹の先と目は黒い。シオカラの方が腹の先の黒い部分が多い。オオシオカラトンボの翅の付け根は暗褐色だが、シオカラトンボは透明である。メスは腹が黄色でオスに比べて全体的に黒っぽい。黒い翅脈の走る透明な翅に黒い縁紋を持ち、先端は暗褐色になる。学校ビオトープなどで見られるのは、シオカラトンボよりもオオシオカラトンボの方が多い。

6月の植物 ニゲラ(クロタネソウ)の花と袋果

これは、日本名クロタネソウ、園芸店でニゲラの名で売られているキンポウゲ科秋まき一年草の花と花後の袋果。ニゲラ属(クロタネソウ属)16種のうち、園芸店で扱うのは主としてニゲラ・ダマスケナ種(Nigella damascena)だ。袋果は茎ごと陰干しにして、クリアラッカースプレーを吹きかけると、素敵なドライフラワーになる。袋果の中の黒い(ラテン語=Niger)タネは、ブラッククミンと呼ばれ、カレーのスパイスとなっているが、それはニゲラ・サティヴァ(Nigella sativa)の種子のみで、日本での栽培は少ない。なにしろ、キンポウゲ科なので他のニゲラの種子は有毒。西欧では花をLove-in-a-mist、袋果をDevil-in-a-bush と呼ぶ。詩的ですね。

6月 アメリカデイゴ

明治初期に渡来したブラジルなど南米原産の落葉樹。沖縄県の県木のデイゴ(梯梧)とは別種。刺のある新枝の先端に、長い花茎を出してブラシ状に花が咲く。フジなどマメ科の花は、旗弁と呼ばれる花弁が上向きにでて、雄しべや雌しべを包んだ竜骨弁を翼弁が挟んだ形で下に出ている。虫が翼弁にとまり、旗弁の奥の蜜腺にたどり着くと竜骨弁から雄しべと雌蕊が飛び出し、葯と柱頭が虫の腹につく。アメリカデイゴは、花が反転して旗弁が下に出て、竜骨弁が上になり、葯と柱頭は虫の背中につく。日本と地球の反対側のブラジルでは、花も反転するのだろうかねぇ?

6月の植物 キバナノヤマオダマキの花

ヤマオダマキの黄花種。東北ではヤマオダマキが多く、中部地方ではキバナノヤマオダマキが多いようだ。初夏の高原、瀟洒な別荘の庭先で見かけた、スッピンなのに上品で美しいお嬢さんといった立ち姿で、好きな花である。

6月の植物 ホタルブクロの花

花色は関東では赤紫色が多く、関西では白色が多いようだ。変種にヤマホタルブクロがある。ホタルブクロはよく見ると、萼片と萼片との間に反り返る付属片があるが、ヤマホタルブクロにはその付属片がなく、萼片が接する部分が膨らんでいるだけである。恥ずかし気に下を向いて咲く姿が田舎娘の風情で愛おしい。

6月の植物 ノアザミのたね

国立科博の門田裕一博士によれば、日本には150種を超えるアザミがあり、うち145種が日本特産とのこと。ノアザミは総苞が粘ることと、春から咲き始め、初夏にはタネを風に載せて飛ばすのが特徴。井上陽水の「少年時代」でうたわれた「夏が過ぎ風あざみ、誰のあこがれにさまよう」のアザミは、ノアザミではないであろう。

6月の植物 モナルダ(タイマツバナ)の花

夜空に赤く燃え上がる松明のような赤い花で、言い得て妙な名前である。一方、園芸市場名ではモナルダと呼ばれている。モナルダの名前でこの赤い花を見直すと、ラテン系のあでやかな踊り子の姿が浮かんでくる。しかし、原産は北アメリカで、インディアンのハーブ茶として世に知られた。

6月の植物 シチダンカ(七段花)の花

ヤマアジサイの一変種。シーボルトの「日本植物誌」に採録されているが、現物の存在が確認されず、1959(昭和34年)に、六甲山で発見されるまで、長いこと幻の花であった。最愛の妻の名前(お滝さん)を学名(Hydrangea otaksa)に使うほど、シーボルトがアジサイ好きであることを見抜いた本草学者や医学者が、シーボルトに気に入られようと、苦労して探し出した花なのだろう。

6月の植物 コガクウツギの花

渓谷沿いの林道を歩いていて、木の下闇の切れ目の陽当たりで、キリっとした白い花に出くわして、思わず見入ってしまう、そんな凛々しさがある花である。ガクウツギとコガクウツギは酷似しており、同様な場所に生えている。丸ぽちゃ顔(装飾花の萼片の形)のガクウツギ(姉)に対抗して、アゴが少し尖った小顔のコガクウツギ(妹)は、あたしのことも忘れないでと訴えてくる。