9月 ツクツクボウシ(つくつく法師) セミ科

主に夏の終わりの残暑が残る頃に、夏が終わるぞ、終わってしまうぞとけたたましく「警告」を発するように鳴く。名前のとおりツクツクボ=シと鳴いているが、うるさいのを我慢して警告を注意深く聴くと、結構音楽的に多彩なリズムとメロディーであることに気がつく。まず、鳴き始めは、低く控えめにジージージー、ジュクジュクジュクジュクジュクと始まり、突然、ジュクジュクボーシと「ボーシ」の声高の部分が付け加えられるようになり、このジュクジュクボーシがしばらく長く続き、徐々にリズムが早くなる。すると、「ホーシ」の部分が声高で、ジュクジュクが低音なので、鳴き声はオーシンツクツク、オーシンツクツクと聞こえるようになる。徐々にテンポを早め、やがて大声でのオシオース、オシオース、オシオースと最後の叫びが続き、最終的にジイ―と低く長く鳴いて一楽章が終わる。イントロ、メロディ、エンディングの三部作で、なんとまぁ複雑な鳴き方をするのだろう、何のためなのか、感心してしまう。しかし、複数匹が競い合うように、ひっきりなしにツクツクボウシを叫びだすと、もういい、と言いたくなる。そんな気持ちを、俳人は「よし分かった 君はつくつく 法師である 池田澄子」と詠んだ。筆者は、「わかったヨ、テメェの名前は ツクツクボウシ!」と怒鳴りたい気分だ。