木漏れ日が射しこむような薄暗い疎林の草むらなどでよく見られるチョウで、幼虫はススキ、アズマネザサ、チヂミザサ、カサスゲ、エノコログサ(ネコジャラシ)などイネ科・カヤツリグサ科の植物を食べて育つ。日本では北海道渡島半島から九州屋久島などで見られる普通種である。翅の色は地味な淡褐色で、裏面にはやや黄色みをおびた白い縦帯模様と目玉模様(蛇目模様)がある。成虫は花には殆ど飛来せず、樹液や腐った果実、犬などの獣糞にあつまる。曇天の日を除くと、昼間はあまり活動せず薄暗い所で休んでいて、夕方になって薄暗くなると飛び回る。いわば日陰者の生活である。この仲間は翅の裏面にヘビの目に似た目玉模様があるのが特徴で、野鳥などの敵を驚かせ相手が一瞬ひんだ隙に飛び去る作戦であろう。ジャノメチョウの仲間は日本に24種も生息しており、いずれも〇〇ジャノメ、△△ヒカゲ、コノマ(木の間)の名がつけられている。目立つチョウではないが、筆者はこの仲間との出会いを鮮明に覚えている。北アルプス白馬岳山頂の山小屋付近でウルップソウの葉陰から飛び出したタカネヒカゲ、海道網走湖畔のトドマツ林の草むらから飛び出たオオヒカゲ、山梨県清里高原のカラコギカエデの樹液から湧き出たウラジャノメなど、当方が彼女らの存在に気づかず近づいての、突然の驚きのためだ。ヒメジャノメは、人々は気づいていないかもしれないが、市街地の公園、あるいは住宅地でも繁殖している「普通種」で、多数生息している。蛇目模様はヘビがいない市街地での、野鳥対策にはならないはずだが、トカゲ、カエル、カマキリに対して、蛇の目模様は、効果的なのだろうか。