9月 カラスウリ(烏瓜、唐朱瓜) ウリ科

雌雄異株のつる性多年草で、鶏卵形で朱色の果実が木の枝にぶら下がる秋の姿で、人々に親しまれている。一方、花は、7~9月の夏の夜に開き、朝には萎む一日花である。夜にひっそりと白く繊細で美しい花を咲かせるが、誰にも知られずに明け方には花を終わらせてしまう様子から、「男嫌い」の花言葉がある。雌雄異株なので雄花と雌花は別の株に咲くが、開花している時間が一夜だけなので、受粉する機会も少なく、いかにも薄幸薄命な色白美人を思わせる。雄花雌花とも花筒は6㎝と長く、花冠には小さな花弁が4~6枚あり、花弁の縁は糸のように細かくレース状に分裂して10㎝ほどに広がる。月明りの闇で白く目立つ投網を投げかけた感じである。雄花は芳香を出し長い花筒の底には蜜がある。吸蜜しようと花弁に止まろうとしても、細い糸状の花弁なので、吸蜜者の重さに耐えかねて花弁は垂れてしまい、吸蜜作業が妨げられる。ハチドリのように、空中をホバリングして吸蜜できるスズメガの独壇場だ。スズメガが雄花で吸蜜中に口吻についた花粉は、雌花の底に口吻を伸ばした時に雌しべに付着し、受粉が成立する。やがて明け方とともに、細いレース状の花弁は、受粉した雌しべを包むように縮み花は閉じる。開花時刻、暗闇で目立つ白色の花、芳香、レース状の花弁、長い花筒・・など、全てはスズメガの飛来に焦点をしぼった仕掛けで、カラスウリの花粉の受粉確率を大幅に高めている。決して「男嫌い」ではなく、私の彼氏はスズメガですと、一途な花なのだ。