6月の終わりから7月の始め頃に現れる。動物の鳴き声を人間の言葉で言い表すのは困難だが、「チーーー」とも「ジージージー・・・・」とも聞こえ、少し離れて聞くと「ニーニーニー・・・・」と、細く高周波の金属音に聞こえる。小生の場合は、長年悩んでいる静かな耳鳴りの音と酷似している。
松尾芭蕉が「閑さや岩にしみ入る蝉の声」と俳句に読んだセミについて、歌人の斎藤茂吉はアブラゼミであると主張したことがあり、大論争が巻き起こった。芭蕉が山形市宝珠山立石寺を元禄2(1689)年5月27日(今の暦では7月13日頃にあたる)に訪れて俳句に読んだ史実を基に現地調査を行なった結果、7月13日ごろではニイニイゼミは鳴くが、アブラゼミはまだ鳴かないことが判明し、茂吉も非を認め論争は治まった。
他のセミと異なり、本種の抜け殻は泥だらけなことから、地面に湿気を好むセミと見られていた。1964年の東京オリンピックの頃から、東京の市街地では本種の数は極めて減少しつつあり、都市化による土地の乾燥によるものと推測されていた。ところが近年は、またニイニイゼミが増加してきているようで、その理由が分かっていない。まさか、先のオリンピックは見逃したから今度こそという訳でもあるまいし、自然のことは分かっていないことが多い。