北米東北部の原産で、明治時代末期~大正時代に日本に渡来した。対暑性も耐寒性もあり、陽当たりの悪い所でもよく繁殖して、ほぼ野生化しているのを見る。長い穂状の花序の下の方から徐々に咲き始める。日の当たり具合により株によって開花時期がズレるので、お盆の頃から10月末まで長いこと次々と開花する。花色は白~ピンク、薄紫があり、派手な花ではないが、蜜も花粉も充分にあるようで、色々な昆虫が集まる。チョウではキアゲハ、クロアゲハなどのアゲハチョウ類が訪れるが、モンシロチョウやヤマトシジミなどの中型~小型のチョウは吸蜜に訪れない。カクトラノオの個々の花は長い筒型なので、大型で蜜を吸う口吻が長いアゲハチョウの仲間でないと、花筒の底にある蜜に口吻が届かない。花の身としては、なるべく同じカクトラノオの花粉を運んで貰いたいわけで、そのため吸蜜可能者を限定することにより、カクトラノオの花粉をもった媒介者の訪れる機会を多くし、受粉確率を上げている。そんな企みをおくびにも出さず、しれっとした顔で今日も静かに咲いている。