虫によって齧り取られた(えぐられた)葉の、紅葉が終わり赤褐色の枯葉状態になった切片に擬態しているガ(蛾)である。葉脈に見える筋もあり、普通の人は3㎝ほどの大きさの本種が目の前にいても全く気が付かない。見事な擬態である。
幼虫が食べる植物(食草)はアオツヅラフジとなっているが、アケビも食べるとの情報もある。成虫の出現時期は3月~11月とされているが、1月、2月にも見られた記録もある。成虫越冬するのだろうか。成虫は熟したカキやミカンなどの果汁を吸いに夜間飛来するようだ。
食草のアオツヅラフジはツヅラフジ科のつる性木本で、低山の林縁などに生え、晩秋に小さな球状の果実がブドウのように房状に結実し碧く熟して目立つようになる。観察園には生えておらず、筆者は武蔵野市では見ていない。なぜ、観察園でアカエグリバが見られたのかが気になる。観察園のミカンはヒヨドリなどに嘴でつつかれ、中味がむき出しになっているので、成虫は果汁を吸うことができる。だが、幼虫の食草のアオツヅラフジは生えていない。かわりに同じ属のツヅラフジ(オオツヅラフジ)が生えている。これも食草としているのか、あるいはアケビがあるので、これが食草なのか、不明である。
日本では、愛好者の多いチョウは,迷蝶、偶産種、外国の移入種を含めて329種知られているが、ガは6,000種以上生息し、生態が不明なものが多く、新種が発見される可能性も極めて高い。そのためか、大学の農学部ではガの研究をする女子学生が増えていると聞く。観察園でムシを怖がる男児の来園がしばしばあるが、「ムシ愛ずる小姫君(女児)」が増えているのも確かであり、これも女性の社会進出の兆しのように見えて頼もしく思える。穿ちすぎかなぁ。