12月 アシズリノジギク(足摺野路菊)キク科

 ノジギクの亜種で、高知県の足摺岬から愛媛県の佐田岬(さだみさき)に分布するとされている。しかし、豊後水道を挟んだ大分県のホームページでは、大分県の国東海岸、姫島、豊後水道域、宮崎に分布するとあり、豊後水道域の海岸沿いの路傍や崖に生育し、個体数も多いが、道路工事、埋立工事などの影響で生育地の減少が懸念されると書いてある。

 母種のノジギクは、兵庫県以西の本州・四国・九州の瀬戸内海および太平洋沿岸近くの山野に自生。同じような地域に分布している。アシズリノジギクは、野路というよりも、海岸近くの環境に適応した種であると考えられる。アシズリノジギクの特徴として、葉はノジギクより小型で3中裂し、葉裏や葉柄に潮風対策として、白い毛が密生し、葉表からみて白毛が葉縁を白く縁取っているように見えるとされている。ノジギクは葉がより大きく、3中裂から5中裂し、葉縁の白い縁取りは目立たないことが違いだ。しかし、アシズリノジギクの白い縁取りは、イソギクほど明確ではなく(イソギクの項を参照)、5中裂に近い3中裂の葉もあるので、種の同定は難しい。

 似たものに、セトノジギク(瀬戸内海沿岸に分布し、ノジギクよりも葉が薄い)があり、その他シマカンギク(近畿地方以西の本州・四国・九州の海岸近くに分布、花は黄色のほか白もある)など、同じキク属だけで15種あり、ノコンギクなどのシオン属、オオユウガギクなどのヨメナ属、ヤマジノギクなどのハマベノギク属、ハマギク属、ミヤマヨメナ属、キオン属など、全部で95種類もあるようだ。

 年老いた頭では、これら同定する際の特徴を覚えられない。間違った名前で呼びかけても、プイっと横向くこともなく、変わらず笑顔で咲いている。伊藤佐千夫の『野菊の墓』で出てくる民代が愛した野菊は、なんという名前なのだろうか?それだけは覚えたい。