12月 ツルソバ(蔓蕎麦)タデ科

 晩春から初冬までの長期間、茎頂や葉脇から花序を伸ばし、芳香ののある小さな白花をまとめて付けている。目立たないけれど長期間咲いていることから、花言葉は「いつもそこに」となっている。

 東アジア原産の多年草で、日本では伊豆七島、紀伊半島、四国、九州、沖縄など温暖な海岸近くの、あまり日当たり良くない林内や林縁に生える。地球温暖化の波に乗って分布域を北へと広げているようだ。写真の個体は千葉県館山市の沖ノ島の、トベラが茂る林の縁に生えていた。ツルの先端を切り取り挿し木したもので、多肉植物のように繁殖力が強い。

 沖縄ではシーボーサーと呼び、腫物の吸出しや止血、耳鳴りを治す民間薬とされている。沸騰水に、ツルソバの乾燥物、ハランの根、ヤブラン、リュウキュウアイを入れ、水が半分になるまで煎じて服用するようだ。だが、リュウキュウアイは東京では入手難であり、かつ、厚生労働省の通達(薬生監麻発1227第9号)では「健康食品に配合されることもあるが、潰瘍性大腸炎の患者では、摂取により肺動脈性肺高血圧を発症する可能性があるため要注意」とある。無理してシーボーサーを摂取する必要はなさそうだ。

 かなり蔓延るので、今の時期に毎年剪定しようと思うのだが、細く小さい体でありながら、木陰で飲まず食わず寒い一冬を成虫越冬するキタキチョウの、越冬に入る前のキチョウな延命秘薬として、今年もまだ剪定せずにいる。