12月 ハンカチノキ(鳩の木、幽霊の木)ミズキ科

 春4~5月に、枝先に白いハンカチをぶら下げたような花を咲かせる。白く大きな花弁に見えるものは、花を守る葉が変化したもので、苞と呼ばれる。ミズバショウ、カラー、ハナミズキ、ポインセチアなどの花弁に見える部分は苞で、花を寒さや病虫害から守るために葉が発達したものである。

 日本で現存する最も古いハンカチノキは1958年頃に種子から育てられたもので、小石川植物園に植えてある。そんなことを知らない筆者は、『プラントハンター物語』-植物を世界に求めてー T.ホイットル著、八坂書房、1983年発刊、という本を購入し、読んだ中に中国四川省の山奥でのハンカチノキ発見にまつわる物語と精密画が載っていた。非常に興味をもち、なんとか自分も苗木を育て花を見てみたいと思った。1991年以降、中国からタネと苗木が大量に輸入され、やがて苗木店でも売りに出された。50㎝ぐらいの苗木が送料込みで当時2万円近くしたが、強い好奇心に負けて購入し、自宅の庭の中の1等地に植栽した。

 あとで知ったことだが、花が咲くまでに10年~20年かかるとのこと。我慢我慢の3年が過ぎ、樹高が1mほどになった頃、市内に「木の花小路公園」が造成(1998年)されたので、そのシンボルツリーとして寄贈した。植栽後10年後に開花し、今では多くの花をつけて市民に喜ばれている。そして2003年頃、新宿御苑に植栽されていたハンカチノキの下でタネを拾い、自宅に播種した。発芽率が非常に低く手間暇をかけて2度の冬を越した春に1本だけ発芽した。この苗木は「むさしの自然観察園」に寄贈し、現在では10輪程度の花をつけるほどに成長、ピンポン球大の果実もつけている。上記寄贈した2本とも、花をみるまで15年を要している。一般家庭で育てるにはかなりの忍耐力が必要だ。

 近年、カルフォルニアのソノマ地区で作出された1才性のハンカチノキ“ソノマ”という品種が出回るようになった。苗木は1万円程度と高価だが、3~5年後には花が見られる。ハンカチの木の花を自宅で観賞されたい方は、こちらがお薦めである。