4月 ウラシマソウ、ムサシアブミ、ユキモチソウ
サトイモ科テンナンショウ属三種
ウラシマソウ(浦島草)サトイモ科
地下の偏球形の根(コンニャク芋に似た形)から、葉茎を1本のみ地上に出し、葉茎の先端に11~17枚の小葉を鳥足状に広げる。この葉柄の途中から、暗紫褐色の花を覗かせる。花の形は、毒蛇が鎌首を立て、今にも噛みつかんばかりの、気味の悪い形をしている。この花の形をしているのは花弁ではなく、多数の花を守るように筒状に花を取り囲む葉が変化したもので、「仏炎苞」と呼ばれている。本当の花は、この仏炎苞の中の奥底にあり、棒状の円柱に多数の花をつけている。
この花の構造を、見慣れた花で例えるならば、ミズバショウの白い大きな花弁に見える部分が「仏炎苞」で、真ん中に見える黄色い棒状の部分が、多数の花が集まった部分で、肉状花序と呼ばれている。ミズバショウの仏炎苞は開いているが、ウラシマソウの仏炎苞は、その上部だけがヘビが口を開けたように口を開けている。そして、仏炎苞の最上部は細い紐状になり、この紐が30~40㎝と伸びて、地上に垂れている。このことから浦島太郎の釣り糸に例えてウラシマソウの名がついたようだ。
地面まで垂れるこの長い糸はなんのためなのか・・・アリやダンゴムシなど地上性の虫を花粉媒介者として、肉状花序までおびき寄せるためか?と想像していた。だがそうではなく、蚊の姿に似たキノコバエを花粉媒介者として、おびき寄せるためらしい。この細い釣り糸部分から、フェロモンのようなものを発散させ、引き寄せているようだ。この釣り糸部分を切断・除去すると、極端に受粉による結実性が低下することから、キノコバエによる受粉の仕組みと判明した。
更に感心することは、ウラシマソウの株が未熟だと、肉状花序の花は雄花だけとなり、株が熟して大きくなると、花は雌花ばかりとなるという、雌雄別株の花を咲かせ、仏炎苞の形が雌雄で少し変えている。仏炎苞の上部から中に入り込んだキノコバエは、上からは脱出できない構造になっている。しかし、雄株の仏炎苞の下部には脱出用の隙間ができており、雌株の仏炎苞下部には隙間がない。則ち、雄株に入ったキノコバエは、仏炎苞の中で脱出すべく飛び回り、花粉を体に沢山つけたあと、下部の脱出口から外部へ出て、他のウラシマソウに移動できるが、雌株に入ったキノコバエは脱出口がないため外へは出られず、仏炎苞の中で飛び回り、体についた花粉を雌花につけたあと、仏炎苞の中で死に絶える。キノコバエは、釣り糸から出るフェロモン?でおびき寄せられ、花粉を雌蕊に運んだあとは見捨てられる・・・ハニートラップに引っかかる哀れな定めのようだ。