6月の植物 ホタルブクロの花

花色は関東では赤紫色が多く、関西では白色が多いようだ。変種にヤマホタルブクロがある。ホタルブクロはよく見ると、萼片と萼片との間に反り返る付属片があるが、ヤマホタルブクロにはその付属片がなく、萼片が接する部分が膨らんでいるだけである。恥ずかし気に下を向いて咲く姿が田舎娘の風情で愛おしい。

6月の植物 ノアザミのたね

国立科博の門田裕一博士によれば、日本には150種を超えるアザミがあり、うち145種が日本特産とのこと。ノアザミは総苞が粘ることと、春から咲き始め、初夏にはタネを風に載せて飛ばすのが特徴。井上陽水の「少年時代」でうたわれた「夏が過ぎ風あざみ、誰のあこがれにさまよう」のアザミは、ノアザミではないであろう。

6月の植物 モナルダ(タイマツバナ)の花

夜空に赤く燃え上がる松明のような赤い花で、言い得て妙な名前である。一方、園芸市場名ではモナルダと呼ばれている。モナルダの名前でこの赤い花を見直すと、ラテン系のあでやかな踊り子の姿が浮かんでくる。しかし、原産は北アメリカで、インディアンのハーブ茶として世に知られた。

6月の植物 シチダンカ(七段花)の花

ヤマアジサイの一変種。シーボルトの「日本植物誌」に採録されているが、現物の存在が確認されず、1959(昭和34年)に、六甲山で発見されるまで、長いこと幻の花であった。最愛の妻の名前(お滝さん)を学名(Hydrangea otaksa)に使うほど、シーボルトがアジサイ好きであることを見抜いた本草学者や医学者が、シーボルトに気に入られようと、苦労して探し出した花なのだろう。

6月の植物 コガクウツギの花

渓谷沿いの林道を歩いていて、木の下闇の切れ目の陽当たりで、キリっとした白い花に出くわして、思わず見入ってしまう、そんな凛々しさがある花である。ガクウツギとコガクウツギは酷似しており、同様な場所に生えている。丸ぽちゃ顔(装飾花の萼片の形)のガクウツギ(姉)に対抗して、アゴが少し尖った小顔のコガクウツギ(妹)は、あたしのことも忘れないでと訴えてくる。

6月の植物 アマチャの花

ヤマアジサイの変種で、山沿いの渓谷などに稀に自生。葉に甘み成分のフィロズルチンを含み、乾燥・発酵させ、4月8日の灌仏会で使う甘茶をつくる。しかしアジサイは中毒事件をおこすほど有毒なので、素人判断で甘茶を作るのは危険。

6月の生きもの ジャコウアゲハの幼虫

ジャコウアゲハの成虫は黒いアゲハチョウで、オスの下腹部はジャコウの香りがすることが名前の由来。幼虫は、食草のウマノスズクサを食べて、アリストロキア酸(アルカロイド)という有毒成分を貯めこむ。これにより、幼虫、成虫とも小鳥などから身を守っている。クロアゲハ、カラスアゲハ、ナガサキアゲハ、などのアゲハチョウなどの黒いアゲハチョウやアゲハモドキなどの蛾は、ジャコウアゲハに擬態していると考えられている。蛹は美しく目立つ黄色で、番町皿屋敷のお菊の亡霊の姿に似ていると見て、お菊虫の別名がある。

6月の生きもの キアゲハの幼虫と成虫

我々がよくみるアゲハチョウ(ナミアゲハ)とキアゲハは、飛んでいる姿を見た時はよく似ていて間違うこともある。しかし、幼虫は全く異なる姿をしている。ナミアゲハの幼虫はミカン類やサンショウを食草とし、終齢幼虫は緑色のイモムシで胸部に黒と白の目玉模様ができて、緑色のヘビに擬態しているようだが、愛嬌のある表情ともいえる。一方、キアゲハの終齢幼虫は、黒と緑の派手な縞模様で、黒い縞模様の部分には黄色の警戒色も入り、毒々しい風貌をしている。エサはセリ科植物で、海岸沿いではアシタバ、ハマウドなど、高山地帯ではシシウド、ミヤマウイキョウなど、平地ではセリ、ミツバなど、農地ではニンジン、パセリ、フェンネルなどを食草としているため、生育地が広い。写真の食草はセリ。