シモバシラの枯れ茎に、冬の朝早く見られる霜の華。地下の根は生きていて、吸い上げた水が茎から染み出て氷結し、霜の華が咲く。
地下は凍っておらず、気温が零度以下に下がった朝早くに見られる現象。観察園では地上40㎝の高さまで成長した。シモバシラだけでなく、同じシソ科のコウシンヤマハッカやカメバヒキオコシ、キク科のアズマヤマアザミ、カシワバハグマ、モミジガサほか、オカトラノオ、ミズヒキなどでも見られる。
12月 クリスマス・ホーリー(ヒイラギモチ) モチノキ科
日本で節分の時に魔物や災難を避ける魔よけに使われたヒイラギ(柊)は、モクセイ科の植物で、常緑で、冬に暗紫色の実をつけ、葉に刺がある。一方、クリスマス・リースなどを飾る赤い実のヒイラギは、科が異なる全く別の植物だ。
西欧ではモチノキ科で、ヨーロッパ西部・南部、アフリカ北西部原産の、セイヨウヒイラギ(Ilex aquifolium,European Holly)が使われ、日本ではその代替として、中国東北部・朝鮮半島原産のシナヒイラギ(Illex cornuta,Chinese Holly、ヒイラギモチ)が使われている。
モチノキ科の植物は、冬にモチノキのほか、ソヨゴ、タラヨウ、ナナミノキ、アオハダ、など赤い実をつけるものが多い。ヒイラギの実の代わりに飾りとしてこれらの実を使ってもよいのではないかと思うのだが・・・・。
セイヨウヒイラギは、①常緑で、②冬に赤い実をつけ、③刺のある葉を持つところから、古い時代のケルト人の祭司(ドルイド)は、魔力をもつ聖木と崇めていたが、その習慣がキリスト教にも伝えられ、クリスマスには欠かせない飾りとなったようだ。
日本の節分のヒイラギは、鬼の目を潰す役目として魔力をもつと考えられていた。遠く離れた国ではあるが、同じような発想に興味が湧く。都市伝説の日本民族はユダヤ人(古代イスラエル人)が祖先であるという「日ユ同祖論」が、眠気と同時に、思い浮かんできた・・・・。少し、寝酒を飲みすぎたかな。
12月 ハンカチノキ(鳩の木、幽霊の木)ミズキ科
12月 ツルソバ(蔓蕎麦)タデ科
12月 イソギク(磯菊)キク科
花の少ない11~12月に、小さな黄色い花を房状に咲かせる姿が可愛いイソギクは、野菊の中でも人気が高く、産地が限定されている種であるにもかかわらず、一般家庭でも多く植栽されている。イソギク(Chrysanthemum pacificum)の自生地は、千葉県犬吠埼~静岡県御前崎および伊豆諸島の海岸であり、「フォッサマグナ要素」の植物とされている。
「フォッサマグナ要素」の植物は、伊豆諸島、伊豆半島、房総半島南部、箱根、富士山、御坂山地、八ヶ岳など極めて限定された範囲に自生する植物で、イソギクのほかオオシマザクラ、マメザクラ(フジザクラ)、ガクアジサイ、オオバヤシャブシ、ハコネウツギ、サンショウバラ、ニオイエビネ、カントウカンアオイ、タマノカンアオイ、フジアザミ、ワダンなど190種程度が知られている。現代ではオオシマザクラ、ガクアジサイ、ハコネウツギなど、日本各地で栽培されている種類も多い。
イソギクの特徴は掲載写真で見られるように、イエギク(一般に栽培されている菊で、中国渡来の植物)と異なり、花弁のような舌状花がなく、黄色の筒状花のみである。また、葉の縁が白く縁取られているように見えるが、それは葉裏に密生する白毛がわずかに見えるためである。
キク科植物は雑交しやすいので、イソギクもイエギクとの間に自然交配による雑種が出来ている。舌状花があり、花色も白や赤色のものがある。これらの雑種はハナイソギクと呼ばれており、筆者はイソギクの特徴である葉の白い縁取りを見分の際の拠り所としている。シロヨメナの項で記述したように、筆者は野菊の同定は、どうも苦手だ。
12月 センダンの実(栴檀、楝の実)センダン科
12月 スズカケノキ(鈴掛の木)の実 スズカケノキ科
11月 アメリカフウロ(亜米利加風露) フウロソウ科
写真を一瞥して「あッ、ミコシグサね」と思う人が多いと思う。花が咲き終わったあとに出来る細長い莢が裂開して、外側に巻き上がった形が、祭りのお神輿の屋根の形に似ていることから全国的にミコシグサの愛称がある。ゲンノショウコ(Geranium thunbergii)が標準和名であり、古来より下痢止めや胃腸病の薬草として有名で、煎じて飲めば効果がすぐ現れるので、「現(or 験)の証拠」の名がついた。
しかし写真の植物は、ゲンノショウコではなく、よく似たアメリカフウロ(Geranium carolianum)である。(ゲンノショウコに比べ、葉の切れ込みが深い。)アメリカフウロは北米のカロライナ州で多く見られた植物であるが、物流が盛んになるにつれて全米に広がり、日本や中国にも分布するようになった。英名を Crane’sbill (ツルの嘴)と言い、中国では老鸛草 (ろうかんそう、鸛=コウノトリ)と、ツルを意識した名前になっている。これは、学名のGeranium がギリシャ語のgeranos (ツル)を語源としており、植物分類学が未発達の時代において、学名の影響を受けて命名した名前だからではなかろうか。
では、なぜ日本では、学名を意識せず、ゲンノショウコという極めて実利的な名前がついたのだろうか?ゲンノショウコの薬効は古くから日本では知られており、漢方でなく日本で開発された薬草だからだ。日本人もなかなかやるじゃないかと言いたいところであるが、食料不足による偶然の発見である可能性もある。どうなんだろう。